「どうなる?幼稚園、保育所の無料化」(くらし☆解説)
2019年02月21日 (木)
藤野 優子 解説委員
今年10月から幼稚園や保育所の利用料を無料にするための法案がまとまり、先週、国会に提出された。
3歳以上の幼稚園や保育所の利用料を安くしたり、無料にしたりする方針は変わっていないが、認可外の保育所については一部変更点がある。利用する施設によって違いがあるので、施設ごとに説明する。.
【施設は3種類】
小学校入学前の子ども達が通う施設は、大きくわけて3つある。
ひとつは、専業主婦世帯のお子さんの割合が高い「幼稚園」。
ふたつめは、共働きやひとり親世帯のお子さんが多く通っていて、保育士の配置や施設の設備などが国の一定基準を満たした「認可保育所」。
三つめは、この認可保育所以外の「認可外の保育所」。
これらの施設に、今、およそ300万人の3歳以上の子どもたちが通っている。
【幼稚園の利用料は?】
いま幼稚園の月々の利用料は、概ね親の所得に応じて決まっていて、無料から2万5700円まで5段階に設定されている。これが、10月からは全て無料になる予定。
所得制限はない。
ただし、中には利用料がもっと高い私立幼稚園に通っている人もいて、そうした人にはひと月2万5700円の補助が出て、利用料が安くなることになる。
【認可保育所の利用料は?】
こちらも、親の所得に応じて、無料からひと月10万円余りまで10段階に設定されている。これを、10月から一律に無料にしようとしている。
こちらも所得制限はない。高所得者ほど負担が減ることになるので、子育て世帯の間の経済格差を広げるとも指摘されているが、政府は少子化対策として、広く子育て家庭の負担を軽くするためのものなので、所得制限は設けないとしている。
ただ、保育所の場合、利用料は無料になるが、給食費の負担が増えるので注意してほしい。
【増える?給食費】
いま認可保育所では、原則、主食だけが保護者の実費負担となっていて、おかず代は負担していない。保育料の中でまかなわれている。
ところが、10月からはおかず代も実費負担になる予定。
金額は地域や施設によって違いがあるが、内閣府の調査によると、子ども一人あたりひと月平均おかず代で4720円かかっている。
これは、幼稚園では主食もおかずも実費負担なので、これに合わせようとなった。
ただし、このおかず代、年収360万円未満の世帯は免除される方針。
それから、幼稚園も保育所も、制服代、行事の費用、送迎バスの料金などは、これまでどおり実費負担。保育所の延長保育も保護者の負担。
認可保育所の0歳から2歳のこどもについては、住民税非課税の世帯は0歳から2歳の利用料も無料になるが、それ以外は同じ。政府は、2歳までは待機児童が多いので、今回は3歳以上を無料化するとしている。
【認可外の保育施設の場合は?】
こちらは、自治体で「子どもの保育が必要」と「保育認定」を受けた人であれば、
原則、ひと月3万7000円まで補助を受けられる。
この「保育認定」とは、親が仕事や就職活動中、あるいは妊娠・出産、病気などで体調が悪い、祖父母の介護があるといった理由で、施設での子どもの保育が必要になった時に、自治体に申請を出して認定を受けるもの。補助を受ける場合は必ずこの認定を受ける必要がある。
【変更点は対象施設】
政府は当初、最初の5年間は、▼自治体の独自の基準を満たした施設、▼企業が主導してつくった保育所、▼24時間子どもを預かるベビーホテル▼幼稚園での預かり保育、延長保育。また、施設ではないが▼ベビーシッターなどを利用している人も、全て補助を受けられるとしていた。
ところが、今回の法案では、「自治体ごとに決められる」と変えた。
なぜかというと、安全性を心配する声が多かったから。
実は認可外の施設にも「指導監督基準」がある。
例えば、このように、職員の中の保育士の割合や施設の広さなどが決められている。これは、劣悪な施設を排除するためにつくられた、いわば子どもの命を守るための最低限の基準ともいわれている。
ところが、都道府県による立ち入り調査の結果をみると、この基準を満たしていない施設は全体の4割を超えている。
それで、補助の手続き事務を担うことになる自治体・市町村が、「税金を使って補助を出す以上、安全性を考えるべきだ」とか「指導監督基準を満たす施設に限定すべきだ」と反発。それで、政府は、原則は全ての施設としながらも、地域の状況に応じて自治体が補助の対象施設を絞ることができるようにした。
【地域によってかなり差がでる?】
これから各自治体で決まるのでまだ判らないが、いくつか自治体の話を聞くと、対象から外れる施設も出てきそう。いま3歳以上で認可外施設を利用している人は9万人を超えているが、安全の確保は重要。やはり安全な施設を増やしてから、無料化すべきだと私は思うが、政府や自治体は施設への改善指導を徹底して、基準を満たす施設を増やしてほしい。
【施設を利用する際は、補助対象かよく確認を!】
色々な施設があるので、自治体も、▼どの施設が補助や無料化の対象となるのか、早めにHPなどに掲載して情報提供してほしいし、▼保護者が施設を選ぶ際の判断材料になるので、(いまは公表していない自治体が多いが)全ての施設の指導や監査の結果をしっかり公表する必要がある。
【最新の状況を踏まえた待機児童対策を】
この4月からの入園審査の結果が出てきているが、待機児童がさらに増えている自治体の話も聞く。これからの国会の論戦では、幼稚園、保育所の無料化の問題点にあわせて、待機児童や保育士不足の対策が今の計画で十分なのか、最新の状況を踏まえて、しっかり議論してほしい。
(藤野 優子 解説委員)
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