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「どう考える? レジ袋有料化へ」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

きょうは、レジ袋の有料化について考えます。今井解説委員。
 
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【レジ袋。ごみ袋として利用している家庭も多いと思いますが、有料になるのですか?】
その方向は、間違いないと思います。というのも、今週、環境省の小委員会が、プラスチックのごみを減らすために、2030年までに、使い捨てのプラスチックの排出量を25%減らすこと。そして、具体策として、小売店にレジ袋の有料化を義務付けることを盛り込んだ戦略案をまとめたからです。
 
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【以前、この番組でも取り上げましたが、プラスチックのごみを減らそうというのは、海の汚染を防ぐためでしたよね】
そうです。今、世界で問題になっているのは、使い捨てのプラスチックの容器や包装がポイ捨てされたり、風で飛んでいったりして、川に入り込み、最終的に海に流れ込んで溜まっていることです。

【動物の被害だけでなく、人の健康にも影響が心配されているのですね】
そうです。プラスチックは、小さくなってもプラスチックのまま残ります。このままだと、2050年には、海の中のプラスチックの量(重さ)が、魚の量を超えるという予測もあって、世界で取り組みが進んでいます。そこで、日本でも対策をとらなくてはいけないということで、まずは、使い捨てプラスチックの象徴として、レジ袋を有料化すべきだということになったのです。
 
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【なぜ、レジ袋が使い捨ての象徴なのですか?】
今、国内では、国民一人当たり、一日一枚は、レジ袋を使っているとも言われていますが、いわゆるマイバッグを持っていれば、必要ないことが多いからです。

【店が独自に有料化するといった自主的な取り組みではダメなのですか?】
これまでも、スーパーは自主的な取り組みをとってきました。その結果、レジで袋を断る人の割合=辞退率は、53%と、10年前と比べると大幅に増えました。でも、このところ頭打ちです。というのも、いったん有料化に踏み切ったものの、無料でレジ袋を配っている近くのドラッグストアなどにお客さんをとられたとして、無料に戻す動きもでているからです。
 
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一方、海外では、プラスチック製のレジ袋について法律で使うのを禁止したり、有料にしたりするよう義務付けている国が70カ国近くに達しています。そこで、自主的な取り組みは、もう限界にきている。日本でも有料化の義務づけはやむをえない、という流れになったのです。
 
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【確かに、ここまで見ると、有料化も仕方ないかと思いますね。いつからですか?】
まだ決まっていません。今回は、大枠の方向性が固まった段階で、具体的なことはこれからです。仕組みを考えていく上では、「どこまで有料化するのか」「どういう方法でやるのか」「いくらくらいになるのか」。こうした点が、大きな焦点になると見られますが、いずれも、簡単な問題ではありません。
 
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【まず、「どこまでか」というのは?】
どの店の、どういった袋を有料にするのかということです。

【スーパーやコンビニだけではないのですか?】
▼    それ以外でも、例えば、ホームセンターやデパート惣菜売り場。衣料品の量販店、パン屋、本屋、花屋。これもレジ袋ですよね。業種や規模に関わらず有料化するのかどうか。
▼    それから、例えば、スーパーのレジの外で、自分で無料でとれる内袋。デパートでも、洋服を買ったときに、紙袋に入れる前に、内袋に入れてくれることがあります。こうした内袋は有料化するのかどうか。

【内袋がないと、肉などの汁が漏れたり、服が汚れたりする心配がありますよね】
確かに、服や野菜、パン、花などを、内袋に入れずにむき出しでマイバッグに入れるのは・・・抵抗がありますよね。

【何枚もマイバッグを持ち歩かないといけなくなるかもしれませんね】
▼    さらに、お祭りや学校のバザーなどで、地域の人たちが焼きそばの屋台を出した時に、持ち帰り用に入れる袋はどうなのか。
考えていくと、どこで有料化の線を引くのか。簡単ではありません。

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そして、2点目。有料化といっても、どういう方法でやるのかという問題です。

【有料化というと、レジでおカネを出して袋を買うのではないのですか?】
それもまだ決まっていません。店からレジ袋を買う方式にするのか。あるいは、レジ袋をいらないという人に、おカネを返す(キャッシュバック)方式も、認めていいのではないかという意見もあります。
ただ、スーパーの業界団体の話では、レジ袋の辞退率。内訳をみてみると、
▼ キャッシュバックなどの店は、30%から40%程度なのに対して
▼ レジでおカネを出して買う方式だと、70%から80%程度に上がるというのです。
 
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【やり方によって、効果が違うのですね】
同じ金額でも、わざわざ追加でおカネを払ってレジ袋を買うのはイヤだ。それなら、マイバッグを持っていこう、という人が多いことがうかがえます。

【そして3点目。いくらになるのか?ですね。関心があります】
料金のメドを国が打ち出すのか。それとも、それぞれの店が独自に決められるようにするのかも含め、これも、今後の議論次第です。が、ひとつ、参考になるのが、大手スーパーのレジ袋の価格による辞退率です。2円のところは72%。6円のところは86%と、やはり、値段が高い方が効果があるのがわかりますが、では、いわゆる100円ショップで、6円をとるのはどうなのか。一方、スーパーでは2円でも、そこそこ効果はあるけれど、ふらっと寄る人が多いコンビニで1円や2円だったら、どれだけ効果があるのか。業態とか、買うものの値段によって、効果があるレジ袋の価格は、違ってくるかもしれません。
ちなみに、先日、スウェーデンに本社をおく衣料品専門店の「H&M」は、来月5日から、日本のすべての店舗で、レジ袋を1枚20円と有料化した上で、順次、プラスチック製を廃止して紙袋に変えていくことを発表しました。
 
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【20円だったら絶対にマイバッグを持っていきますよね】
もともと、国がレジ袋の有料化に踏み切るのも、できるだけマイバッグを持ってきてもらい「プラスチックの袋を無駄に使うのをやめよう」という狙いからです。今後は、国民から広く意見を聞いた上で来年6月までに正式に戦略を決め、その後、具体的な検討が始まることになります。いずれの点についても、どうすれば最も効果が上がるのかという観点から、丁寧に議論をしていってほしいと思います。
 
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【レジ袋をごみ袋として使っていた家は、ごみ袋も、買わなければいけなくなりますね】
地域によっては、すでに自治体が指定した有料のゴミ袋しか使えないところもあります。ごみ袋を買うようになると、できるだけたくさん、ごみを詰めよう。あるいは、ごみになるものは、もらわないようにしようと、無駄な使い方をしなくなるという効果もあるかもしれません。
あとは、先ほども言ったように、マイバッグを持っていれば、レジ袋は必要がないケースが多いですよね。

【つい忘れてしまうんですよね】
私も、ついつい忘れてしまうのですが、「習慣」の問題だと思います。委員の中からは、東京オリンピック・パラリンピックまでに、レジ袋の有料化をスタートさせるべきだという意見もありました。今回の議論をきっかけに、改めてマイバッグを持ち歩くことを、今から、習慣づけていかなければいけないと思っています。

(今井 純子 解説委員)


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