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「ご用心・損害保険で無料住宅修理」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

台風や地震など、大きな災害が相次いでいますが、災害で住宅が壊れたことにして、住宅の修理を呼びかける業者によるトラブルが増加しています。

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全国の消費生活センターに寄せられたケースでは、まず、工務店を名乗る業者が自宅に訪れ、住宅の修理をしませんかと呼びかけてきます。「近くで工事をしている工務店の者なんですが、雨どいが壊れているのが気になりました。この前の台風で壊れたんじゃないですか」と持ちかけてきます。こちらが「そうかも知れません」と言うと、「損害保険に入っていませんか。入っているなら、それで修理すれば無料で出来ます。保険金の申請もこちらで引き受けます」と誘います。

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それに加えて、このように持ちかけます。「この屋根の部分も、古くなって傷んでますね。それも合わせて保険で処理すれば、ここも無料で修理できますよ」と。無料ということで、こちらも頼むと、すぐに契約するよう持ちかけます。
ここから色々なトラブルが出てきます。

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まず、保険金は、災害などによって壊れた部分の修理が補償の対象となります。
このため、古いから壊れた「経年劣化」の部分は対象になりません。しかしすでに工事の契約をしていますので、屋根の部分は自分で経費を出さなければならなくなります。

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別のケースでは、工事が途中までで終わったり、雑な仕上がりになっていたということです。業者に聞くと、支払われた保険金のこの3割以上を「手数料」と言って、持っていってしまい、残りの7割の費用で工事をしたためだということです。手数料については、事前に説明はなかったということです。

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さらに、別のケースでは、契約してお金を支払ったら、なかなか工事に取り掛かってくれないため、解約を申し出たところ、逆に違約金を請求されたということです。

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こうしたトラブルの相談は年々増加していまして、昨年度、全国の消費者センターには1178件ありました。今年度は、昨年度を上回るペースで増加しているということです。7割は、60代以上の方からの相談で、高齢者を狙ったセールスであると見られています。

増加の要因は、災害が増えていることです。業者側は、直近に発生した台風や大雨、地震などを口実にし、これで壊れたことにして保険金を請求しましょうと持ちかけてきます。こうした業者から見ると、災害は、いわば宣伝文句の一つで、もうけるチャンスになっているのかもしれません。

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本当に災害で壊れたところの修理を、保険請求することは問題ありません。しかし、今回のケースでは、保険の対象範囲を越えた請求をしていることが問題です。これは、支払われないというだけでなく、保険金詐欺です。業者側はもちろんですが、家主も、保険の範囲以外であることを知った上で請求したとみなされると、詐欺罪にあたるおそれがあります。

つぎに、保険請求の手数料ですが、請求を他の人がやることは問題ありません。
ただ、手数料を取られるということが、契約時に明示されていない、または契約書自体がなく知らされていないというケースが少なくありません。

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被害を防ぐためには、まず、「保険金で修理しましょう」と呼びかける業者は、怪しいと思ってくだい。そして、色々と話を勧められても、すぐに契約しないことです。

保険で補償される範囲は、入っている保険によってさまざまですので、自分で保険会社に確認しましょう。

また、契約の前に、複数の工事業者に見積もりを依頼するのもいいと思います。
実際にあったケースですが、別の業者に詳しく調べてもらった結果、最初にセールスをしてきた業者が、屋根に登って調べると言って、屋根を壊していたということです。

契約してしまった場合、ほとんどが訪問販売なので、クーリングオフ制度が使えます。契約から8日間の間ならば、特別な理由がなくても、消費者側から一方的に契約を取り消せます。あるケースでは、クーリングオフするというと、手数料はクーリングオフできないと言って、請求してきたということです。しかし、クーリングオフは、契約が最初から無かったことにするため、手数料や違約金は必要ありません。

契約書をもらっていない場合や、不備があると、8日を過ぎてもクーリングオフが適用できるケースもあります。泣き寝入りせず、消費者ホットライン188番に相談してください。というのがあります。最寄りの消費生活センターにつながりますので、アドバイスを受けるといいと思います。

高齢の方からの被害相談が多いということもありますので、離れて暮らしているご高齢の方がいらっしゃったら、こうした手口がはやっているということを伝えていただきたいと思います。くれぐれも「無料です」と言われてもすぐに飛びつかず、宣伝文句にひっかからないようにして欲しいと思います。

(三輪 誠司 解説委員)


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