リュウグウに到着してから3か月、探査機はやぶさ2は今月末の着陸に向けて偵察ロボットを投入するなど本格的な探査を開始し、リュウグウに無数の岩が転がる厳しい環境がわかってきた。水野倫之解説委員の解説。
はやぶさ2が地球から30億キロあまりを飛行してリュウグウの上空に到着したのは今年6月下旬。
その直前に撮影されたリュウグウからはくぼんだ地形がぼんやりとわかるが、まだ地表面の詳しい様子はわからない。
到着した時の画像はだんだん鮮明になってきた。
コマ型と呼ばれるそろばんの玉のような形をしていて、地表面には大きさ数百mの岩が。
このリュウグウをもっと詳しく調べようとはやぶさ2はその後、7月には6キロまで近づき、赤道付近の直径200メートルの巨大なクレーターをはっきりとらえたほか、8月初めには、1キロまで接近し、これまで見えていなかった数メートルの岩が無数に存在する様子を確認。
このように岩が多い小惑星はほかにも確認されていて、小惑星どうしがぶつかってバラバラになったあと、その破片が集まってできたのではないか、だから岩が多いんではないかとチームでは推測。
ただこの岩だらけの地形に、探査チームは頭を抱える。
着陸がかなり難しいと予想されるから。
はやぶさ2の最大の目的は、生命の起源の謎に迫るもの。
はるか昔、誕生して間もない地球にたくさんの小惑星やすい星が衝突。
こうした天体が地球の生命の材料となる有機物を運んだのではないかとする考え方。
リュウグウには多くの有機物があることがわかっているので、その粒子を調べれば地球生命の起源の手がかりが得られるのではないかと期待。
そしてはやぶさ2はその粒子を採取するため、今月下旬にリュウグウへ着陸予定。
筒状の装置を地表に当てて粒子を回収するが装置の長さは1m。
大きい岩があると、本体や太陽電池パネルが傷ついてトラブル発生のおそれ。
100m四方に50㎝以上の岩がないなるべく平坦な場所に降りたいが、岩だらけのため頭を抱えている。
さらに表面を詳しく調べるために先月下旬、偵察ロボットを投入。
その直前にははやぶさ2の影がリュウグウに映っていた。
この直後に2台のロボットを分離。
月や火星など大きな天体の探査では車輪のついたローバータイプが使われるが、リュウグウの重力が地球の8万分の1しかないので車輪を動かすと宙に浮いてしまって移動できないためジャンプして移動する方式。
どこに着地するかは行き当たりばったりだが、これまでに地表面の様子を100枚以上撮影。
岩石だらけな様子がはっきりと写し出されていて、やはり平らな場所がないという厳しい環境。
そこでチームではこうした場所以外に、これまでの探査で比較的岩が少ない場所を3か所選び出し、着陸候補地。
でも数mの大き目の岩が何個かある。
チームの津田雄一プロジェクトマネージャーは「誰も行ったことがない天体を探査するとはこういうことなのか」と話し、技術的には決して安心できない着陸になるとの見通しを示す。
そこで今後、まずはあす、別のロボットを投下してこの場所の詳しい写真を撮るほか、今月中旬にははやぶさ2本体が上空40mまで降下する着陸のリハーサルをして詳しい調査を行った上で、一番岩の影響が少ないところを最終的な着陸地点にする方針。
安全な着陸地点を選ぶ作業がプロジェクトの成否を決める、といっても過言ではないので、リハーサルを徹底的に行って、準備万端で着陸に挑んでほしい。
(水野 倫之 解説委員)
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