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「小惑星到着間近!はやぶさ2」(くらし☆解説)

水野 倫之  解説委員

はやぶさ2が今月27日前後に小惑星に到着する見通しに。
はやぶさ2の探査について、水野倫之解説委員の解説。

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今、はやぶさ2は小惑星リュウグウまであと750キロのところまで迫り、追っかけているところ。
きのう、はやぶさ2のチームが会見を開き、今月27日前後にリュウグウの上空20キロを回る軌道に到着できる見込みとなったと発表。
JAXA吉川真准教授は、「非常に楽しみ。サイエンスチームはエキサイトしている。」と話した。
初号機はトラブル続きだったが、はやぶさ2ここまでトラブルらしいトラブルもなく、順調。

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1号機をベースにしていて電気の力でガスを噴射して加速するイオンエンジンや小惑星のかけらを採取するための筒、かけらを入れる耐熱カプセルなど基本的な装備や、見た目はほぼ同じ。

2014年12月に打ち上げられたはやぶさ2は、地球の重力を利用して軌道を変換し、地球と火星の間にあるリュウグウを追いかける軌道に入った。
そしてイオンエンジンで加速、これまで31億キロの道のりをほぼ予定通り、飛行。
今後無事到着できれば、1号機と同じように小惑星に着地し、かけらを採取して地球に持ち帰り、太陽系がどうやって形成されたのか詳しく調べる。

ここまで順調に飛行できたのは見た目は同じでも1号機のトラブルの教訓を生かして、機体に様々工夫をこらしているから。
1号機では姿勢制御装置が相次いで故障、4台あるイオンエンジンも地球帰還直前にはすべて使えなくなるという絶体絶命のピンチに。

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そこではやぶさ2では姿勢制御装置の予備を1台増やし、イオンエンジンも電子部品を改良し、長寿命化とパワーアップを実現。
こうしたトラブルの教訓が生きて、順調に来ていると思う。

でもチームに楽観ムードはない。リュウグウのことがまだよくわかっていないから。
ただ近づくにつれて徐々に見えてきている。

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こちら、今月6日にはやぶさ2のカメラが捉えたリュグウの写真で、2600キロまで接近した段階で撮影したが、まだ点。

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きのう公開された画像を見ると、少しですが大きく見えてきている。

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これまでの観測で、直径はおよそ900mで東京スカイツリーより2まわりは大きい。
また形はきのうの画像からは、やや角ばった部分があるのかもしれないと見る専門家も。
ただ表面のでこぼこの様子は全くわかっていない。
さらに7時間あまりで自転していることもわかってきた。
でもどんな向きに回転しているかはいまだ不明。

ただよくわかっていないことを逆手にとって、チームでは一般の人や関係者にリュウグウの想像図を描いてもらうコンテストも。

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こちら表面が少しでこぼこしていますが、平らな場所を探せば安全に着陸できそうです。

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穴ぼこだらけのもある。
この画像は、NASAの探査機が撮影した土星の衛星の一部。ここまででこぼこだと危険ではやぶさ2は着地できず、観測計画の練り直しが迫られることになるかも。
地表面の様子の不安以外にもチームが今最も心配しているのはリュウグウの衛星。

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リュウグウの直径は900mほどなので引力はそれほど強くないが、月のような天体が周りを回っていることはありうる。
チームでは衛星を探そうとカメラでリュウグウの方向を撮影し続けました。
その結果、リュウグウから50キロ以内には50センチ以上の衛星がないことは確認できたがもっと小さい衛星がある可能性は残るということで、カメラで確認しながら、慎重に近づいているところ。

心配事が尽きないが、これまでの観測でチームにとっていいことも。
表面の色合いから、リュウグウには有機物を含む鉱物があることが確実に。

地球上の生命は、有機物のある小惑星が隕石となって地球に運ばれ、そこから進化して誕生したとする説が最近注目されている。「はやぶさ2」で、生命誕生の手掛かりが得られる可能性も。

「はやぶさ2」は、到着後2か月表面を綿密に観測して着地場所を決め、秋以降に3回着地してかけらを採取します。
再び感動をもたらしてくれるのか、今後のはやぶさ2の探査注目したい。

(水野 倫之 解説委員)


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