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「今年も注意!ヒアリの夏」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

【去年夏たびたびニュースになった危険な「ヒアリ」が今年も見つかっている】

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 先月、大阪府八尾市で家電製品を買った人が家で段ボール箱をあけたところ、中から1匹のアリの死骸が見つかりました。事業者を通して環境省に通報があり専門家が調べた結果、ヒアリと確認されました。今回は死骸であり素手で触ったりしなければ危険はありませんが、去年ヒアリが見つかったのは港湾などだったのに対し一般の住宅内で見つかったのはこれが初めてのことです。
     
【どうして家電製品の箱に入っていた?】

 はっきりわかっていませんが、この製品は中国の工場で梱包されたもので大阪に輸入され販売されていました。中国はヒアリが繁殖している地域のひとつであること、そしてヒアリは死後一定の日数が経っていると見られたことなどから、おそらく中国の工場で入り込んでそのまま梱包されて日本に運ばれたのではと思われます。今後私たちが生きたヒアリと直面して刺されるリスクも否定はできません。もし見つけたら決して素手でさわらないで下さい。

【あらためてヒアリはどんなアリ?】

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 ヒアリは体長2.5~6ミリほどの赤茶色のアリです。一般的に見られる黒いアリは1cmぐらいですからそれより小型です。お尻に毒針があり、刺されるとヤケドのような激痛がしたり、じんましんが出たり、時にはアナフィラキシーという激しいアレルギー反応を起こすことがあって刺された人が呼吸困難になったり命にかかわることもあります。
 南米原産ですが、グローバル化と共に分布が広がっていてオーストラリアや中国などにも定着しています。暖かい地域のアリなので冬場は活動性が低く仮に国内にいても見つかりにくいですが、これからの時期は注意が必要です。
      
【去年の夏は、日本各地で見つかっていた】

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 国内で最初に確認されたのが去年6月(発見は5月)、兵庫県尼崎市で、中国から神戸港に来た船から陸揚げされたコンテナに500匹以上のヒアリが入っていました。その後、11月までの間に関東から九州まで12の都府県で26例、確認されています。同じ港で複数回見つかった所もあるので印の数は合いませんが、八尾市のケースは27例目になります。
 今年は6月5日現在、まだ八尾市で確認されたケースだけですが、これからまた各地でヒアリが見つかり始めるのではないかとも思われます。
      
【対策は?】

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 初めてだった去年に比べると対策はある程度は進んでいます。
 まず国は今年1月にヒアリの防除についての基本方針や見分け方のマニュアルを作り自治体向けの講習会を行ってきました。そして中国との定期コンテナ航路などを持つ68の港湾で、年2回粘着トラップなどを設置して捕獲調査を行うようにしています。
 自治体によっては独自に詳しいマニュアルを作って調査を行ったり、職員や港湾関係者にヒアリの見分け方の講習を行うなど、対策を始めています。

【ヒアリかどうか見分けるのは難しい?】

 そこが課題のひとつです。ヒアリは、赤茶色で2.5ミリ~6ミリと小さめで触覚や背中の形に特徴があるなど、いくつか見分け方のポイントはありますが、肉眼では普通のアリと違うようだとはわかっても、他の外来アリなどと正確に見分けるのは困難です。専門機関にサンプルを送って確認してもらうのには日数もかかります。そして、怪しいアリを全て殺虫剤で殺してしまうというのは生態系への影響を考えても良いこととは言えません。

【ヒアリを正確に見分けるのが難しい中、役立ちそうなものも】

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 先月、国立環境研究所が、ヒアリかどうかを短時間で判別できる検出キットを開発しました。主に自治体職員などが使うことを想定したものですが、アリの死骸と、ヒアリのDNAだけに反応する特殊な試薬をまぜて温度を上げると、ヒアリのDNAが入っていた場合だけ白く濁るので判定できる、というものです。結果は2時間あまりで出るそうです。現在はテスト段階ですが、昆虫の専門家がいなくてもヒアリかどうかが正確に判定できるということで、順調なら8月頃から希望する自治体に配布できる見込みだそうです。
     
【ヒアリの侵入はこれからも続く?】

 グローバル化と共にヒアリに限らず外来生物が持ち込まれる機会は今後も増えて行くと思います。そして外来生物がいったん日本の環境中で繁殖し広がってしまうと、それを排除してもとの生態系に戻すことはまず困難です。だからこそ、港湾などの水際対策と共に、入ってきたらなるべく早く見つけて排除する必要があります。

【私たちが怪しいアリを見つけたらどうしたらいい?】

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 素手でさわったり捕まえようとしてはいけません。ヒアリの見分け方は環境省のHPなどに公開されていますので、ヒアリではないかと思われる場合は、環境省の「ヒアリ相談ダイヤル」に電話するといいでしょう。万が一刺されて、特に呼吸困難など激しいアレルギーが疑われる症状が出た場合はただちに医療機関を受診して下さい。
 素足になることも増えるこれからの季節、ヒアリのことを知っておいていただければと思います。

(土屋 敏之 解説委員)

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