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「なにがエコなの? 代替フロン規制へ」(くらし☆解説)

土屋 敏之  解説委員

◆テーマは、「なにがエコなの? 代替フロン規制へ」。土屋敏之解説委員です。
そもそも「代替フロン」とは?

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オゾン層破壊を防ぐためにフロンが禁止されて、代わりに今、エアコンなどに使われている物質です。ところが、その代替フロンの生産も規制することが、先月の国際会議で決まりました。

◆なぜ規制?

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ひとことで言えば、地球温暖化防止のためです。
フロンは20世紀に発明された化学物質で、冷蔵庫やエアコンの「冷媒」などに世界中で使われてきました。冷媒というのは液体が気化する時に熱を奪う性質を使って周りを冷やすのに使われる物質のことで、エアコンでは本体と室外機をつなぐ配管を通って循環しています。フロンはこの冷媒として非常に優秀だったこともあり、「夢の化学物質」とも言われていました。

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ですが、これが有害な紫外線から私達を守っているオゾン層を壊してしまうとわかったため、「特定フロン」と呼ばれる種類は1987年にできた「モントリオール議定書」で全廃することになりました。代わりに使われるようになったのが「代替フロン」で、色々な種類がありますが、現在主に使われているのがHFCという水素(H)・フッ素(F)・炭素(C)の化合物です。こちらはオゾン層には影響がありません。ところがこのHFC、実は温室効果が二酸化炭素の百倍から1万倍もある、温暖化の面では極めて悪い物質でした。そこで今回、規制に追加することになったわけです。

◆エコだと思われて普及したものなのに別の面ではエコではなかった。いま、どのように使われている?

エアコンのほとんどに使われ、ビルの空調やお店で食品を冷やしているショーケースなど業務用にも大量に使われています。冷蔵庫も少し前の型だとよく使われています。これらが使用中に少しずつ漏れたり廃棄する時に大量に放出されることで、空気中に出てしまう量が今後大幅に増えると見られています。量自体は二酸化炭素よりはずっと少ないですが、温室効果がはるかに大きいので、温暖化の原因として無視できない割合になります。

◆どんな規制をする事になった?

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世界の国々を3つのグループにわけて段階的に生産や消費を減らすことになりました。
日本などの先進国は3年後の2019年から減らし始めて、2036年までには温室効果に換算して、85%削減しなくてはなりません。中国などは2番目のグループ。インドなどは3番目のグループですが、こちらも2047年までには85%削減します。
世界中で減らすことで、気温上昇を0.5℃抑えることが出来ると言われています。「たった0.5℃?」と思われるかもしれませんが、去年できたパリ協定では今世紀末の気温上昇を2℃未満に抑えるために大変な努力が必要だとわかってきましたから、HFCだけで0.5℃抑えられたらかなり効果があるとも言えます。ただ、日本にはこれまでHFCの生産を具体的に規制する法律はありませんでしたから、議定書にあわせて法改正も必要になってきます。

◆私たちのくらしにも影響?

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基本的には今回の議定書では、一般の消費者には直接の義務は生じません。国ごとの生産量などを削減するもので、法改正もメーカーの生産を許可制にして削減を割り当てるなどが考えられます。
その上で、身近な電化製品はどんな状況かというと、冷蔵庫は既に対応済みです。国内の新製品はHFCから温暖化にほぼ影響しないノンフロンの冷媒にほぼ切り替わっていますから、選ぶとき特に気にしなくても大丈夫です。
そして、エアコンについては逆の理由で今は気にしても仕方がない状況です。まだ家庭用エアコンはノンフロンのものが開発されていないからです。だから特定フロンのように全廃ではなく、削減に留まったとも見られます。
現在、家庭用エアコンではR32という新しい冷媒を業界はアピールしています。従来の冷媒は二酸化炭素の2千倍ぐらいの温室効果があったのが、R32は約7百倍なので3分の1に減り、現状ではこれが比較的優れているという段階です。買う時どう選ぶかより、処分する時にきちんと出す方が重要だとも言えます。

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今、懸念されるのは、HFCの規制に便乗する商法が増えないか、ということです。例えば、「エアコンの冷媒をエコなものに入れ替える必要がある」とか「環境省や経済産業省が勧めている」とかたって、冷媒の入れ替えを売り込む事業者があるようですが、これはウソです。元々機械は使用する冷媒にあわせて設計されていますので、別の冷媒に入れ替えると壊れたときもメーカーの保証は受けられませんし、事故や爆発の危険もありえますので気をつけてほしいと思います。

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それより、消費者がいま出来るエコな事としては、やはり「処分する時にきちんと出すこと」です。今も一応、HFCも機器の使用を終えたら回収することになっていますが、実際は流通しているフロン類のうち、回収は3割ほどしかできていません。残りは大気中に放出されてしまっていると見られています。
よく廃品回収車などで家電製品を無料で引き取ると呼びかけている例がありますが、本来、エアコンや冷蔵庫も廃棄処分は家電リサイクル法に基づいて適正に行う必要があります。
エアコンを捨てる時、いきなり室外機との配管を切って取り外すなどは大変危険ですし、HFCはきちんと抜き取って専門の事業者が無害化処理をする必要がありますが、そのためにはコストもかかります。
例えばお勧めできるのは、エアコンを買い換える時にその電気屋さんで回収も申し込む、その時、家電リサイクル法の料金を上乗せして負担することになりますが、これがHFCの処理にも必要です。そういうことを消費者も知っておきたいですね。そして行政には、きちんと回収できる制度を作って欲しいと思います。

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