NHK 解説委員室

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「思うは招く」(視点・論点)

ロケット開発者 植松努

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僕は今、小さな会社を起こし、いろんな宇宙開発をしています。
宇宙開発を目指していると、僕たちの会社では、いろんな困ってる人を助ける仕事ができるようになったんです。いまでは、医療用実験装置の開発や、南極探検用のソリも作れるようになりました。おそらく、僕の会社の人達は、宇宙開発と関わったことで、「できるわけない」と思っていたことができちゃって、優しくなったんだと思います。

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僕は今、北海道の真ん中あたりにある、赤平という街で暮らしています。この町はとってもいい街ですが、昔石炭を掘っていました。いまは掘っていません。だから6万人いた人が、1万人まで減ってしまいました。なぜなら、仕事がないからです。
それを「田舎だからしょうがない」「不景気だからしょうがない」とぼやく人もいます。
でも、ぼやいても何にもなりませんね。仕事がなければ、つくることができるんです。

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ということで、僕はこの街で、生まれて初めて会社を作りました。
気がつけば僕は、株式会社の社長になっていました。

今日皆さんに聞いていただくのは、思うは招くというお話しです。
これは、中学生の時に母さんが教えてくれた言葉です。
すごい成績が悪かった僕が、飛行機やロケットの仕事をしたいと言ったら、母さんは、「あんたには無理だわ」って言いませんでした。
「頑張ればできる!」とも言いませんでした。
思うは招くだよって、気休めの言葉を教えてくれました。
でもね、僕はこの言葉のおかげでいろんなことができるようになった気がします。
だから僕はこの言葉が大好きです。

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これが昔の僕です。そして、僕はどこかにいます。ここにいます。みんながあきらかにラジオ体操をしているのに、一人だけグラウンドに絵を描いているのが僕です。
そばで母さんが寂しそうに見つめています。

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でもそんな僕が、いまではロケットを作れるようになりました。僕がロケットを作れるようになったのは、北海道大学の永田先生と出会えたからです。

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実は僕は、ロケットに興味がありましたが、ロケットは危ないからつくっちゃいけないとおもって、諦めていました。
ところが永田先生は、「危ないなら、安全なロケットをつくればいいんじゃない?」と考えていたのです。

そんな人はなかなかいません。そんな人と僕は、たまたま出会っちゃったんです。
「いやこれは運命だわ」と思いました。以来僕は信じているんです。

人の出会いには意味があります。
今日こうして、画面越しに僕らが出会っているのも意味があるんです。
なぜなら、もうすでに、出会う前とはちがう時間がはじまっているからです。
実は人の人生はいくらでも変わります。人との出会いで変わります。
だから、いままでがどんなにダメでも、いまがどんなにつらくても、絶望しなくていいです。勇気を出して、あたらしい誰かと出会うチャンスを見つけてください。それだけで、人生はどんどん変わっていくんです。

永田先生は素晴らしい研究をしようとしていました。でも、お金が無くて困っていました。
僕はお金が無いから、お金をあげることはできません。でも僕は、工作が得意なんです。
先生、僕が部品つくるから・・・って言ったら、永田先生は、一緒にやろうって言ってくれました。

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僕らは助け合えるようになりました。なぜなら、二人とも足りなかったからです。
僕にはロケットの知識が足りません。永田先生は物を作る力が足りません。
でも、ダメじゃなかったんです。だから僕らは助け合えたんです。

実は、人は足りないから助け合うんです。
だから、足りない自分をダメだと思わないでくださいね。
どこかで誰かがあなたの助けを待っています。

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その後も、永田先生がいろんな先生を紹介してくださって、僕たちはロケットだけではなく、人工衛星や、無重力の実験もできるようになりました。
だけど、僕たちのやったことは、他の会社がやらないことでした。
僕らは、他の会社とちがうことをやってしまったんです。
そして、残念なことに日本ではちがうといろんなことを言われます。つらかったです。

でもね、ちがうと必要だと言われるんです。今では僕の会社には、いろんな人達が実験にやってきます。おかげで僕らは、日本の宇宙開発のお手伝いもできるようになりました。
夢みたいです。奇跡です。実はね。奇跡を起こすキーワードがあるんです。
これさえ使えば、皆さんも奇跡を起こせます。

その言葉は「ちがうはすてき!」なんです。ちがうに出会ったときに、おかしいとか、へんとか、評論してる場合じゃないです。ちがうに出会ったら、取りあえず「すてき!」って言っておけばいいです。そうしたら奇跡が起きるんです。
だからね、他の人とちょっと違う自分に向かっても、「すてき!」って言って欲しいんです。それはね、素晴らしい個性だよ。どっかで誰かが待ってるよ。
自分にも「すてき」って言って欲しいです。

今、世の中には、困ったことや、悲しいことや、不便なことがたくさんあります。
それを自分ならどうするかな、ってかんがえたら、新しい仕事になります。

そのときに大切なのが、「やさしさ」なんです。
そして、「やさしさ」は、小さな自信から生まれてくる気がするんです。

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だから僕たちは、今日本全国で、子ども達に小さいロケットを作ってもらっています。
小さいけれど仕組みは本物です。電気信号を送ると時速200キロまで加速されます。
でも、子ども達は、飛ばす前は楽しそうなのに、僕がロケットを飛ばして見せると、今度は「飛ばしたくない」って言います。
「あんなに飛ぶと思わなかった。自分のはどうせ無理だ」って思うんです。
だれだって失敗したくありません。
だから、失敗しないために「どうせ無理」という言葉を使います。
この言葉は、最強の「やらない言い訳」だからです。
でも、こんな言葉を使っていると成長できません。
だから、まわりで頑張っている人がいたら悔しいので、人の夢や希望や努力を「どうせ無理」という言葉で潰すようになります。
それは連鎖して増えていきます。

<VTR:「ロケットと子どもたち」>
でも試しにやってみたら違います。
どの子のロケットもみんな空高く上がっていくのです。
そうしたら、子ども達に変化が起きます。
無理だと思っていたことができたからなのか、子ども達が優しくなるんです。
この小さいロケットは、子ども達に小さい自信をくれるんだと思います

いま、世界はどんどん便利になっています。
僕が子どもの頃にはなかったものが沢山あります。
だからね。10年前、20年前の常識に負けないで欲しいんです。
以前失敗したことも、今ならできるかもしれないんです。
人生は思うようには行きません。
その思うように行かない世界で、自分はどうするかが大事です。
いま世の中では、ロボットやAIのおかげで仕事がどんどんなくなっています。

でも仕事は作れるんです。
世の中の悲しいことや不便なことや苦しいことを、自分ならどうするかな?って考えたら、そこから新しい仕事が生まれてきます。
そのときに大事なのが、優しさです。
でもね、頑張ると壁にぶつかります。
そのときに大事な言葉が、

だったらこうしてみたら?です。
これは、壁にぶつかったときに、次の手を考える言葉です。

ぜひ、この言葉で、壁の向こうにある素晴らしい未来へ進んでいってほしいです。

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