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「アフリカに希望を灯す」(視点・論点)

一般社団法人GOOD ON ROOFS 専務理事 川口 信弘

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私は佐賀県の鳥栖市で金属屋根の設計施工や太陽光パネルの開発をしています。若い頃から一つの夢がありました。それは、この私の技術を生かして、世界各地にある電気のない村々に明かりを灯す仕事ができないかということでした。
そして、今、私は、夢の実現に向かって具体的に動いています。
その主な舞台はアフリカです。
なぜ、九州の屋根屋が、アフリカの途上国支援を、と思われるかもしれませんが、そのきっかけが、2011年のウガンダでの衝撃的な出来事でした。

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初めて訪れた、アフリカのウガンダで、人々のむせ返るようなものすごいエネルギーを体で感じた日のことを昨日のことのように覚えています。その一方で、赤い大地の上で、電気のない暮らしを送る人々の姿を目の当たりにしました。まるで違う星にでも来たかのような感覚でした。

なぜ同じ人間なのに、これほど環境が違うのか?一体アフリカの政府は何をしているのか?農業が主産業だから電気がいらないのか?考えれば考えるほど、悲しみや怒りが込み上げてきたことを、今でも覚えています。

以来、先進国である日本に住み、屋根と太陽光で活動をしている、私だからこそできることがあるはずだと、足繁くアフリカに通うようになりました。

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アフリカでも、幹線道路沿いには電柱が立っていて、電線が張ってあります。でも少し横道に入ると電線がないんです。
聞くと、幹線道路の電線も電気が通ってないことがほとんどだといいます。

農村部に行けば全く電気はないですし、そこに暮らす人たちは、精製の悪いケロシンランプで光を得ています。それはろうそくに毛の生えたような明かりです。しかも煙が立ち上り、健康被害も多いといいます。

ご存知の通りアフリカには暗い歴史があります。約400年、奴隷として連れ出された歴史と、その後300年続いた植民地としての歴史です。現地の青年たちと話をしても欧米のことを全く信用していませんし、昨今の、中国による、大きな負債を伴うインフラ整備も、歓迎ムードではありません。もうこれ以上、苦しい人生を送りたくない、という彼らの意志の表れのように感じます。

私が初めてアフリカを訪れた時、驚かされたことがもう一つあります。ほとんどの大人が携帯電話を持っているんです。え?電気ないのに携帯持ってるの?って思われるかもしれません。でも今はスマホまで持っています。

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そうなんです。「電気はないけど電波はあるんです」。外国の、携帯会社が基地局を沢山立てて回っているのでアフリカにも電波はあるんです。では彼らは一体どこで、スマホを充電しているかというと、電気のある街まで充電しにいっているんですね。しかも数時間かけて。

よくアフリカは、リープフロッグなどと言われますが、まさしく、先進技術を使った製品がカエル飛びでやってくるんです。スマートフォンは、銀行口座を持たない人々にとっては、送金のツールとして多く使用されています。今はアフリカの人々にとってスマホは命の次に大切なものになっています。

はじめに申しましたように、日本での私の職業は屋根屋です。屋根の施工をする一方で、軽量の太陽光パネルの開発をやってきました。
その中で出会ったのが、フィルム式の太陽光パネルです。
これは、持ち運びができ形状も自在に変えられます。発電量はわずかですが、少量の電気であればどこにいてもすぐに発電して充電できるというメリットがあります。

このフィルム式太陽光パネルを、アフリカでアフリカにあった形で活用できないか、と思いつきました。そして、それ以来、試行錯誤の日々を続けています。

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現地の事情を調べていくと、電気のない村では、明かりが治安の改善に役立つこともわかってきました。

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フィルム式太陽光パネルを、丸太に巻きつけてLEDをつけてやれば、簡単に街灯になります。トタン屋根や藁葺き屋根のような屋根にも設置できて、人々が容易に明かりにアクセスできるようになります。

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実は既に、アフリカ諸国の大きな街には、道路沿いにソーラーパネル式の街灯がたくさん並んでいるんです。普通のガラスパネルでの発電です。ほとんどが中国製やインド製だと聞いています。ところが、そのほとんどが一年持たずに壊れてしまうというんです。
その理由は簡単で、アフリカ大陸は赤土が多く道路も舗装されていません。車が通ったり風が吹くだけで、その赤土が舞い上がってパネルの表面に付着し発電しなくなるんです。

私が日本のODAで電化した村では、木の柱にソーラーパネルを巻きつけた65本の街灯が、もう5年になりますがノーメンテナンスで作動しています。
現地の事情もわからず持ち込んだ、ガラスのソーラー街灯がただのモニュメントになっている一方で、私が巻き付けたソーラーパネルは役に立ち続けています。
今、私は、屋根屋の気概をこめて、「屋根の上でいいことをしようぜ!!」という意味のGOOD ON ROOFSという一般社団法人を立ち上げ、国連が掲げたSDGsの17の目標のなかの一つ「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」を国内外で実践しています。

国内では、産業用の大きな屋根をお借りして軽量の太陽光パネルを設置し、クリーンエネルギーを生成して企業に売電しています。屋根をお借りするわけですから、賃料を企業にお支払いするわけですけど、それをアフリカなどの途上国の電化支援に回してもらえませんか?と企業に働きかけています。すでに25の企業が我々の趣旨に賛同し、支援してくれています。
産業用の屋根は、風雨から設備を守ることが主な役目なのですが、そこでエネルギーを生み出して脱炭素社会の実現を目指し、さらには途上国支援も行おうという三方よしのビジネスモデルです。

現在、我々はアフリカの学校の電化事業を進めています。灼熱の大地アフリカといえども、曇りの日や雨の日があるわけですね。薄暗い教室で子どもたちが一生懸命勉強をしています。

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その子どもたちはこぞってこう言います。
「勉強して将来は医者になってお母さんを助けたい」
「お金持ちになって車を買ってお母さんを街に連れていきたい」。
彼らのハングリー精神、そこに私は未来を感じているんです。
だからこそアフリカの子供達が勉強できる環境づくりを手伝いたいんです。

SDGsの中に「質の高い教育をみんなに」という目標があります。
もし日本で生み出したクリーンなエネルギーでアフリカの子供達に質の高い教育環境を提供できれば、アフリカにおける日本のプレゼンスを上げることになるのではないかと思ったんですね。

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我々はアフリカのベナン共和国で、学校の屋根に太陽光パネルを設置しました。そこで発電した電気で教室にあかりを灯し、その電気で充電したランタンを子どもたちに少額で貸し出すシステムも完成させました。ランタンを自宅に持って帰れば家庭の明かりとして、子供の学習用の明かりとして、更には両親のスマートフォンの充電にも使えます。子どもたちが学校に行かないとランタンが借りられない。ランタンが家庭にあかりをもたらすことで、親も子供も学校に行くモチベーションが上がると確信しています。
そうやって子供達が学校に通うようになれば国の教育水準があがり、貧困からの脱却につながるのです。

このサステナブルなサイクルがアフリカで定着するまで、私は走り続けたいと思っています。現在、私はJICAと西アフリカのブルキナファソでの活動を始めたところです。アフリカの子どもたちを見ているといつも思うことがあります。
「電気はないけど、元気はある」
アフリカの未来は明るいと思う今日このごろです。

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