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「ラグビーワールドカップへの期待」(視点・論点) 

ラグビー日本代表 廣瀬 俊朗

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皆さん、いよいよラグビーワールドカップが始まりますね。僕は無茶苦茶ワクワクしています。皆さんの記憶には2015年の南アフリカ代表戦の勝利が残っているかと思いますが、実はそれまで24年間、ラグビー日本代表、ワールドカップで勝利がありませんでした。そんな状況の中、僕自身が2012年の時、キャプテンになりました。その時、チームをどうやって作ったらいいか悩みましたが、まずは、人がやるスポーツなので人間関係を良くしよう、そういったところから大事にしてやってきましたし、最終的にはですね、勝利というものを追うんじゃなくて、僕達は憧れの存在になりたい、そのために勝とう、という目的にフォーカスできたことがすごく良かったのかなと思っています。

実際、南アフリカ、勝利した後、翌日から世界のラグビーファンが日本代表のことを好きになってくれて、いいチームだと言ってくれて、本当に嬉しかったなと思っています。そんな素晴らしい大会が、実は今度、日本にやってきます。実は今までラグビーのワールドカップはラグビー先進国でしか実施されてきませんでした。いわゆるイギリス、ニュージーランド、南アフリカ、そういった国でしかなかったのですが、ラグビーとしても今後、更にグローバルなスポーツになって世界中の人達から応援されたい、そんな気持ちからアジアで初開催というチャレンジをすることになりました。僕としましては、このワールドラグビー、世界のラグビーの機構がそういったチャレンジをしようと思ってくれたことを、意気に感じて、僕自身ができることを最大限やっていきたいなというようなことを今、考えております。

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実際のラグビーワールドカップの日程は9月20日から11月2日までになっておりますが、グループとしては4グループに分かれております。このうち上位2か国が準々決勝に進めます。実は前回、日本代表は3勝1敗だったんですけれども、上が南アフリカとスコットランドになってしまって、初めて3勝もしたのに準々決勝に行けないチームとなってしまいました。今回はぜひ行ってほしいですね。日本以外には19か国出場します。今、世界ランキングは、実は10年ぐらいニュージーランド「オールブラックス」が1位だったんですけれども、今回、なんとウェールズが今、世界ランキング1位になりまして、注目されているチームであります。その他にもイングランド代表は2015年の日本代表の監督だったエディーさんが今、就任しています。
フィジカル、体の強さを前面にしたラグビー、そんなラグビーを展開してきたりだとか、フィジーとかトンガとかですね、サモアなどはアイランダーって島国の人達なので、とても陽気なので、なんかこうお祭りムードになったりとか、そんなところもお国柄すごく出るので、そんなところも楽しんでいただければ嬉しいのかなと思っております。
プールBは今のところニュージーランドと南アフリカが優勢になっています。
プールCです。ここはイングランド、フランス、アルゼンチンと、強い国が3か国あるので、このうちどの国が出てくるのかなとか、そのあたりも楽しみにしていただければと思っております。

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実際の日本代表の試合の日程は、9月20日がロシア戦ですね。ロシアは体格がものすごく大きくて強い人達がやってきます。あとラグビー自体はそんなにこうなんでしょうね、上手っていう感じはないんですけれども、前面にフィジカルとか格闘技みたいなイメージがあるかと思います。そんなラグビーで来るので、僕達としては、そういう力業に付き合うのではなくて、自分達の運動量だとかフィットネスだとか、そんなところを生かしてほしいなと思っています。9月28日アイルランド、そして10月13日スコットランド。この両国はヨーロッパ系の国なんで、わりとセットピースと言われるスクラムとラインアウトのぶつかり合いみたいなところが強い国なので、フォワードの力が試されるのかなと思っています。10月5日のサモア戦。この試合はですね、先程も言いましたけどサモアというのはアイランダー、島国の人達なので、前半の最初に勢いに乗せるととんでもないプレーが出てしまうんで、僕達としては前半の20分きっちりと相手を抑えて、相手に、「ああ今日はちょっとあかんな、もう負けんな」みたいな雰囲気に日本代表が持っていくといい試合になるのかなと、そんなことを思っています。

実際、今、日本代表は前回のエディー・ジョーンズさんというのは、トップダウンで割とストラクチャーというか決め事が多い中でのラグビーが多かったのですが、今回ジェイミー・ジョセフさんというニュージーランドの方が監督になられて、割とアンストラクチャーというか混沌とした状況の中で選手が判断してやっていくというようなラグビーを大事にしているので、前回とは全然違うスタイルになってきました。

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その中で特に大事になってくるのはキャプテンかなと思っています。それはなぜかと言いますと、ヘッドコーチはですね、実は観客席から試合を見るので、現場の感覚がわからないことがあります。そういった場合において、キャプテンが現場の感覚とか相手チームの顔色とかを見て、どういうのをやっていこうってところを決断しないといけないので、特にこのリーチマイケルというキャプテンは大事になってくるのかなと思っています。

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また彼は自分自身のプレーもさることながら、最近、俳句をみんなでやったりだとか、さざれ石を見に行こうとか、自分達のルーツを探りに行くってところをやっているので、そのあたりのリーダーシップも素晴らしいなと思っているので、今までプレーは凄かったんですけど、オフ・ザ・グラウンドでの働きにも今、注目しているところですね。

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試合とかオン・ザ・グラウンドで注目しているのは田村優選手ですね、ラグビーで言う、サッカーで言う司令塔のポジションなんですけれども、今回のラグビーのスタイルはキックを前のラグビーワールドカップより使っているので、どんなタイプのキックを使うのとか、いつ蹴るのとか、そういったところの判断を、決断をするのは彼なので、彼がどんなことを考えてどんなプレーを選択するのか、そのあたりを注目して見てみたいなと思っています。

何よりも皆さんの応援があると選手は力を発揮できますので、ぜひ皆さん、試合会場もそうですけど、試合会場以外のパブリックビューイングでもいいですし、そこらへんのお食事会場でもいいですし、色んなとこで日本代表を応援してるよというところをサポートいただければ、選手としてはもう頑張ってくれるんじゃないかなと思っています。

今回、日本でのラグビーワールドカップ、実は今までにない価値を築いていきたいなってことを僕自身、ずっと思っていまして、その1つとして「スクラムユニゾン」という活動をスタートさせました。それは何をやっているかといいますと、出場国の国歌とかアンセムを覚えて、ラグビー選手はファンが来た時に一緒に歌っておもてなしをしようということです。これはですね、今まで、例えばイングランドで大会があった時に、イングランドのファンの人はなかなか、例えばスコットランドのアンセムとかウェールズのアンセムを歌おうといっても歴史的な背景もあり、なかなか歌うのに戸惑うこともあったと思いますけど、日本の皆さんは、スコットランドのアンセムでもロシアでもアイルランドでも気持ち良く歌ってあげようという気持ちがあると思うので、これは今までのラグビー先進国で行われているワールドカップではできなかったことを、日本のラグビーワールドカップで初めて実施できるんじゃないかなと思って、楽しみにしているところです。

僕達のラグビーワールドカップの中では、日本の試合はもちろん日本のアンセムと、例えばロシアだったらロシアのアンセム歌ってあげて、日本以外の国の試合ですね、例えばイングランドとかフランスの試合が横浜であるんですけども、そういう時にイングランドのアンセムを歌って、フランスのアンセムを歌って、そしたらなんか隣にいるイングランド人の人と友達になれたり、フランス人の人と友達になれて、一緒にちょっとワインを飲んじゃったりとか、なんでしょうね、フィッシュアンドチップス食べちゃったりとか、なんかそんな風にして交流を持てるとほんとにいい思い出ができて、あ、スポーツっていいなとかラグビーっていいなとか、そんな風なことを感じていただける、そんなキッカケになったらいいなと思って、「スクラムユニゾン」始めました。

あともう1つの理由としてはですね、例えばニュージーランドの国歌ですけども、最初は「E Ihowa Atua (エ イホワ アトゥア)」っていうマオリ語で始まるんですね。終わりは「God(ゴッド)・・・」っていって、神様、守ってくれみたいな歌詞なんですが、最後、英語なんですね、そういう国の成り立ちみたいなのを国歌を通して学べる。最初、現地の人はマオリの人おられて、そのあとイギリスの人来られて、今の国ができたんですよみたいなところを国歌を通して学べるので、それはとても教育的な価値としてもすごくいいんじゃないかなと思ってるんで、ぜひ皆さん、自分達だけじゃなくてお子さんにも勧めて一緒になって歌ってくれれば嬉しいかなと思っていますし、他国のことに興味を持つことは、ひいては日本のことに興味をもつ、そんなキッカケになったらいいなと思ってスクラムユニゾンやってますんで、ぜひ皆さん、YouTubeなりなんなりを見て、僕達の活動を通して、国歌、アンセムを覚えて、パブリックビューイング、試合会場、もしくは試合後の色んなところで一緒になって歌っていただければ嬉しいかなと思っています。

そんな僕達の活動を通して、今年は2019年ラグビーワールドカップ、日本でありますけど、実は来年、東京オリンピック・パラリンピックがありますので、その時はもっと色んな人が僕達の活動を通じて海外の人と触れあうとか思い出ができる、そんな喜びをなんかもう一度感じてもらうとか、スポーツを通して人生が豊かになるとか、そんな体験になればラグビーワールドカップが2019年、あったことの意義が更に高まるのかなと思ってます。一番大事なのは日本代表の応援なんで、日本代表が準々決勝、いや優勝までいけるように応援を皆さんでやっていきましょう。今日は、ありがとうございました。

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