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「男女共同参画社会基本法制定20周年を迎えて」(視点・論点)

日本社会事業大学 理事長 名取 はにわ

今年は、女性も男性も、共に能力を発揮できる社会を目指す『男女共同参画社会基本法』の制定20年を迎えます。私は総理府の男女共同参画室長として、この法律の成立に携わり、その後、内閣府の男女共同参画局長として基本計画をまとめ、現在にいたるまで、男女共同参画を進める仕事をしてきました。
きょうは、この20年の男女共同参画の歩みを振り返り、残された課題についてお話いたします。

 国連サミットで2015年採択され、日本も推進しているSDGs、持続可能な開発目標のバッジを着けている経団連の幹部達の姿をテレビ等で、目にします。その5番目の目標が男女平等を意味するジェンダー平等であり、国連は2030年までに達成しようとしています。
また、最近の首脳国サミットG7において、ジェンダー平等は主要なテーマとなっています。

男女共同参画行政は、昭和50年、国連の国際婦人年に端を発しています。
この年、政府は各省を横断する組織を立ち上げ、以後、国連の動きに連動する形で、婦人問題、後に男女共同参画行政に取り組んできました。

平成の幕開けは、世界的に見ると、希望に満ちたものでした。
平成元年、ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が解消され、人類が、東西の分断を乗り越えて一つになり、地球規模の重大な問題に立ち向かおうという機運が高まっていました。

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平成4年、国連環境開発会議を皮切りに大きな国連の会議が次々と開催されました。
平成5年、世界人権会議
平成6年 国際人口開発会議。
そして、全ての重要問題の解決の鍵は女性問題であるとされ、その集大成として、女性会議が開催されることとなったのです。
平成7年、第4回国連世界女性会議が北京で開かれました。私は、この会議に政府代表団の一人として参加しました。

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この会議で膨大な議論の末、行動綱領が採択されました。「貧困は女性の顔を持つ」という言葉が忘れられません。
ヒラリー・クリントンはファースト・レディとして参加し、会議の昼休みに「女性の権利は人権であり、人権は女性の権利である」と演説しました。
日本から5千人の女性たちが訪中しました。
平成9年、男女共同参画審議会設置法が成立し、審議会は恒久化されました。
平成11年、男女共同参画社会基本法が通常国会で成立しました。衆参両院とも全会一致でした。国会議員の全てが賛成してくださったのです。
参議院議員が超党派で、「男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置づけ」ると、前文を付けてくださいました。
この法律は、日本は、国も地方公共団体も国民も、男女共同参画社会の形成を目指していくという宣言法です。
今、中学生が公民で、「基本法が制定され、男性も女性も対等に参画し、活動できる男女共同参画社会を作ることが求められている」と学んでいます。巻末の参考法令集には、前文のほかに主要条文も掲載されています。

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男女共同参画社会は、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」と定義されています。
ポジティブ・アクションは「積極的改善措置」と定義され、男女平等を達成するための手段とされています。
5つの基本理念が掲げられています。

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1 男女の人権の尊重
2 社会における制度または慣行についての配慮
3 政策等の立案及び決定への共同参画
4 家庭生活における活動と他の活動の両立
5 国際的協調

この基本法を担当できましたことを、本当に感謝しています。
 平成13年配偶者暴力防止法が施行されました。
平成17年、私は、男女共同参画局長として、第2次男女共同参画基本計画の閣議決定に携わりました。防災、科学技術、さらに、2020年までにあらゆる分野の指導的地位に占める女性比率30%程度目標を盛り込みました。
平成27年、女性活躍推進法が成立しました。この法律は、男女共同参画社会基本法の基本理念を基にしています。
平成30年、政治分野における男女共同参画推進法が議員立法で成立しました。
平成を通して、男女共同参画社会の形成に向けて、様々な法制度が整えられてきました。
ですが、世界を見ると、日本の状況に思わず言葉を失います。

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ダボス会議を主催する世界経済フォーラムは、男女の格差解消が世界経済に寄与するとの立場から、平成18年以降、男女間格差を表す世界ジェンダーギャップ指数、GGGIを公表しています。平成18年、日本は115か国中80位でした。最近は100位以下を低迷し、平成30年は110位でした。
なぜこんなに低迷しているのか?
日本では、男性が経済の高度成長期を支えてきた成功体験が邪魔をしていると思います。女性が家事育児をする現実と、職場の長時間労働とが合わされば、女性が活躍するのは難しいのです。
どの国も、男女別の役割分担はありますが、それらを打破しながら進んできています。
GGGIは、教育、経済、健康、政治の4分野の指数から算出されています。

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日本の分野別順位は、健康41位、教育65位、経済117位、政治125位です。1位のアイスランドと比べると、かなり差があります。
日本は、教育は65位なのですが、高等教育機関への女性の進学率は103位と低いのです。

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意外に思われるかもしれませんが、多くの先進諸国では、女性の大学・大学院進学率が男性を上回っています。北欧もアメリカもヨーロッパでも。だから女性が進出できるのです。
日本国内では、東京都と徳島県の女性が、大学への進学率が男性より高くなっていますが、他は全て男性が上回っています。各地の産業界において、もっと大学卒の女性を採用し、女性が活躍できるようになれば、進学率も伸びてくると思われます。地方創生に期待したいです。
経済117位と低く、その中でも、管理職女性比率129位と低迷しています。
女性管理職を増やすためには、ワーク・ライフ・バランスはもちろん、さらに、女性の管理職登用等ポジティブ・アクションが必要です。ワーク・ライフ・バランスだけだと、子どもを持つ女性は、単純な仕事を与えられ、管理職登用の機会がなくなることがあります。
専門職・技術職女性比率も108位と日本は低いのですが、平成30年、医学系大学の受験差別で、女性の門戸が最初から狭くされたことが分かり、衝撃でした。
女性活躍推進法により、大企業における女性活躍が公開されるようになりました。また、ワーク・ライフ・バランスを達成している企業が公共調達で加点されるポジティブ・アクションも導入されました。女性が活躍する企業ほど、労働生産性が高く、将来性があるとして、機関投資家の投資意欲が高いので、今後を期待しています。
政治は125位です。政治分野における男女共同参画推進法が成立したのですから、大いに期待したいところです。
日本はますます人口が減ってきます。それなのに、人材としての女性が、これほど活躍しにくい国なのです。女性活躍推進は、どこの国も長年にわたり営々と努力をしており、互いにいいところを取り入れながら進んでいく分野です。
男女共同参画社会基本法制定20年は、令和で迎えます。
日本のお家芸といわれた「追いつけ追い越せ」を復活させ、みんなで男女共同参画社会の形成を目指していきましょう。

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