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「音楽の力で難民支援」(視点・論点)

ギタリスト MIYAVI
 
(1.自己紹介)
こんにちは、MIYAVIです。ギタリストです。
音楽家、ロックスターとしてギターを弾きながら世界中を旅しています。
俳優や、ファッションモデルとしての活動もさせてもらっています。
それと同時に、今現在、UNHCR「国連難民高等弁務官事務所」の親善大使としての活動もさせてもらっています。

(2.難民問題の現状)
今日は「世界の難民問題」について、そして「音楽や文化がどう貢献できるのか」「音楽だからできること」をお話したいと思っています。

今、世界では紛争や迫害に受けて、住む家や、ふるさとを追われた人が約6850万人以上います。虐殺やレイプなどのため家族との思い出が詰まった家、友達と遊んだ公園、町や村を何も持たずに、なけなしのお金を払って、知らない国や、他の街へ逃げています。
今こうして話している2秒に一人、世界のどこかで誰かが逃げている、そんな信じられない状況です。

僕たちの住む日本では、ありえないことですし、そして残念ながら、こういった現状が、世界で起こっている事も、日本ではあまり知られていません。僕自身も、全く知りませんでした。みなさんも同じかもしれませんが、「難民」と聞くと、難しそう、面倒くさそうだなあ、という印象を持ち、まともに耳を傾けたことはありませんでした。

そんな僕が、この難民問題に関心を寄せて、もっと知りたい、何かしたいと思ったきっかけがあります。

(3.きっかけ、アンジーとの出会い)
それは、2014年、ハリウッド映画「UNBROKEN」に出演した時に、女優でもあり、映画監督でもある、アンジェリーナジョリー氏と出会ったのが、きっかけでした。

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彼女は、女優としての活動の傍ら、難民キャンプを訪問し続け、国連においてスピーチをするなど、およそ20年にも渡って、この難民問題に向き合っています。

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僕自身も彼女との会話の中から難民問題の現状を知り、衝撃を受けましたし、彼女のエンターテイメントを超えたその活動から感化され、「僕にも何かできるんじゃないか」そう思い、難民キャンプへの訪問を決意しました。

(4.はじめての訪問、不安、音楽の力)
はじめて難民キャンプを訪問したのは、2015年の5月でした。
レバノンとシリアの国境付近にあるシリアから逃げて来た難民の人たちのキャンプへ行きました。正直、すごく、怖かったです。危険であること以上に、先進国に生まれ、自由にギターを弾きまくってロックスターとして好き放題やってきた自分が難民問題について何も知らない自分が行って「逆に足手まといにならないだろうか?」そして「行ったところで何が変わるんだろうか?」不安とギターを担いで、レバノンへ行きました。

そして、自分にできる唯一のこと、キャンプに行って子どもたちの前でギターを弾きました。
その瞬間の、子どもたちの弾けるような笑顔とキラキラした瞳、ギターに合わせて、一緒に歌って、体を揺らし、手をたたいているその姿、今でも鮮明に覚えています。

音楽ってすげえ、ロックってすげえ、ギターってすげえ、って思いました。
それまでも、世界中のいろんな国でいろんな人種、沢山のオーディエンスの前で、プレイしてきたしロックしてきたんですけども、ああいった感覚は初めてでした。
自分にも音楽を通じて何かできるんじゃないか、そう強く思いました。

(5.子どものケンカ、教育の大切さ)
せっかくの機会なので、子ども達にもギターを弾かせてあげたいと思って、僕が左手でコードを押さえて皆が、順番にギターを弾いて、一曲作ってみよう!ということで、列になってもらったんですけれども、途中で、ケンカがはじまりました。それも、殴り合いのケンカです。なかには血を出してる子もいて。大丈夫かなあと思って、現地のスタッフに聞きましたが「まあ、よくある子どものケンカだから」と言われました。

「これこそが、彼らを苦しめている紛争の原因になるんじゃないか?」
この子達が、共存社会において、どうお互いをリスペクト尊敬しあって、シェアしあって共存していくか。そう言ったことを、ちゃんと学ばずに育てばそれこそが、彼らが紛争を招いてしまうかもしれない、彼ら彼女らにとって、ちゃんとした教育が与えられていることがすごく大事だなと思いました。

(7.フィードバック、決心)
実際、レバノンへの訪問を終え、帰路についてから、現地のUNHCRのスタッフからの連絡をもらいました。「MIYAVI、子どもたちが『大きくなったら、僕もロックスターになりたい』と言っているよ!」
すごくうれしかったです。大人になって覚えているかはわかりませんけれども、少なくとも、あの瞬間、彼らと、夢、生きる希望、ワクワクを共有できた。そのことが、僕はたまらなく嬉しかったですし誇りにも感じました。
たとえ微力でも、この活動を、音楽を通じて続けていきたいと決心しました。

その後、タイ、バングラデシュの難民の現場を訪問し、ジュネーブでのナンセン難民賞の式典、そしてニューヨーク国連本部での演奏をさせてもらいました。

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(7.次の世代へ、カッコいい在り方)
そして2017年11月20日UNHCRの親善大使に就任しました。
まさか自分がギタリストとしてのキャリアを始めたとき、UNHCRの水色のキャップをかぶって難民キャンプを訪問するなんて思ってもみなかったし、実際、ロックスターとしてカッコいいんだろうかとも思っていました。
でも、いまは心の底から「これこそがロックだ」と感じています。

僕たちアーティストがこういった活動、難民問題に限らず環境問題・教育支援もそうですけれども、こういった活動をカッコいい形で提唱できたならば、見ている人たち、そして、若い世代が「カッコいい」、僕たちもやりたい、と後に続いてくれると信じています。
そしてそういった既存の価値観を壊すこと、そして変えてゆくことこそが本当のロックなんじゃないか?と僕は思っています。

(8.世界の中の日本)
実際日本は、本当に平和でいい国です。ミュージシャンとして本当にいろんな国をツアーで周りますけれども、日本に帰ってくるたびに、「こんなにご飯が美味しくて、安全で、人も親切で、住みやすくて恵まれている国はないなあ。」と思います。

2020年には、オリンピックも来ます。2025年には万博も開催されます。
世界の日本、世界の一員として僕たちが、海の向こうで起こっていることを知ること、そして、それに対して考えること、すごく重要なことだと感じます。
現に、難民キャンプに行くと、UNHCRをはじめ、食糧支援、子どもたちの教育支援、医療支援など現場のいたるところで日本の国旗をみます。すごく誇らしいです。
僕たちが一生懸命働いて稼いで納めている税金が世界のどこかで誰かの命を救っています。
こういった事実も、僕たち日本人はもっと知るべきだし、もっと誇りに思うべきことだとも思います。

(9.世界の問題、人災、地球人)
難民問題は、地震や台風などといった天災と違って、人が起こした、人災です。人が起こした過ちです。人が起こしたということは、人が解決できる、そして、僕たちが次の世代へ持ち越さないように解決しなければいけません。
それが、僕たちの未来への、次の世代への責任だと思います。
日本が、世界の一員として、どうあれるのか?僕たち一人一人が、日本人である前に「地球人」として、どうあるべきなのか?問われているような気がします。

(10.音楽の力、決意と挑戦)
僕自身も、これからも日本人として、ロックスターとして、そして親善大使として、変わらずに、もっともっと、音楽を通じて、世界中へ、メッセージを発信していきたいと思っています。音楽で、今すぐ世界は変えることはできないかもしれないけれども、聞いてくれる人達の心や考え方を変えることはできるかもしれない。
そして、その輪が広がっていけば、「いつか世界を変えられる」そう強く信じています。
それこそ見えない音楽の力、文化の力、存在意義だと思います。
その力を僕は、子どもたちが生きる未来のために精一杯使っていきたいと思っています。
それが、僕の人生をかけた最大の挑戦です。皆さんと同じ日本人、「地球人」として、共に活動できる日が来ることを楽しみにしています。

ご静聴ありがとうございました。

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