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インド イスラム教モスク跡地にヒンドゥー教寺院建設 背景と影響は

安間 英夫  解説委員

インドで1月、歴史的なイスラム教のモスクの跡地にヒンドゥー教の寺院が建設され、モディ首相が完成を祝いました。
その背景と影響について解説します。

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Q)インドでイスラム教のモスクの跡地にヒンドゥー教の寺院が建設されたということですが、どうも穏やかではなさそうですね。
A)
はい。寺院が建設されたのは、インド北部にあるアヨーディヤというところです。
1月22日、モディ首相が出席して盛大に落成式が行われ、その模様はテレビで全国に中継されました。

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このアヨーディヤを巡る問題、歴史的な経緯があります。
ヒンドゥー教の聖地とされ、もともとヒンドゥー教の寺院があったのですが、16世紀、イスラム王朝のムガール帝国がモスクを建設したことから、長年ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間でどちらの土地かをめぐって論争となってきました。
1992年には、ヒンドゥー教徒がモスクを破壊したことをきっかけに全国的な暴動となり、2000人近くが死亡する事態となりました。
そして5年前、最高裁判所がヒンドゥー教側の土地の所有を認めたことから、寺院が建設されてきました。
今回の行事は一連の論争の大きな節目となるもので、モディ首相は「新たな時代の幕開け」とスピーチし、ヒンドゥー教徒寄りの姿勢をアピールしました。

Q)モディ首相の肝いりの行事だったのですね。
A)

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はい。実は寺院はすべて完成していません。
それでも落成式に踏み切ったのは、インドでことし4月から5月にかけて行われる総選挙が背景にあります。
モディ首相の出身母体は「ヒンドゥー至上主義」を掲げる団体で、モディ首相はこの団体を支持基盤に2014年に就任し、ヒンドゥー教徒寄りの政策を進めてきました。
3期目を目指すモディ首相としては、寺院建設の実績をアピールし、国民の8割を占めるヒンドゥー教徒の支持を固めるねらいがあると見られ、与党インド人民党の事実上の選挙運動の開始との見方も出ています。

Q)反発もありそうですね。
A)

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野党からは「宗教の政治利用だ」という批判があがっています。
また人口14億のインドには、およそ14%、2億人のイスラム教徒がいます。
今のところ大きな混乱とはなっていませんが、イスラム教徒の不満は根強いようです。
この問題は、インドの分断と対立の火種として不安要因となりかねません。
多様な宗教、多様な民族をどのように束ねていくのかというインドの国のあり方にも関わります。
人口世界一になったとされるインドは、国際的にもグローバル・サウスの代表格として存在感を強め、日本企業の間でも有望な進出先として関心が高まっています。
そうしたインド、またモディ政権の抱える宗教面での危うさが、今後内外に影響を与えるおそれがあることはしっかり認識しておく必要がありそうです。


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安間 英夫  解説委員

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