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"英国史上最大の冤罪事件"どうする富士通

二村 伸  専門解説委員

イギリスで郵便局長ら700人以上が横領などの無実の罪を着せられた事件をめぐり、子会社が欠陥のある会計システムを納入した富士通は31日、改めて謝罪するとともに被害者への補償を検討する考えを示しました。イギリス全土を揺るがす郵便局のスキャンダルはどのような決着を見せるのでしょうか。

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Q.なぜ700人以上もの人が罪に問われたのですか。

イギリス全土の郵便局に導入された会計システムの残高より実際の窓口の現金が少なかったために2000年以降15年にわたって各地の郵便局長らが横領などの罪に問われ、収監されたり多額の弁償を強いられたりしました。ところが金額が一致しなかった原因は、富士通の子会社が納入した「ホライゾン」という会計システムのソフトウェアにバグやエラーがあったためと判明し、元局長らの訴えを受けて2019年、裁判所はシステムの欠陥を認め、ポスト・オフィスが元局長ら500人あまりに日本円で100億円あまりを支払うことで和解が成立しました。

Q.それから5年たった今なぜまた問題になっているのですか?

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今年1月1日からイギリスのテレビ局が、この事件を題材にしたドキュメンタリードラマを4日連続で放映したことで再び注目を集めました。被害者の多くが補償を受けていないことへの国民の怒りは強く、スナク首相は「地域社会に貢献してきた人が人生を台無しにされたイギリス史上最大級の冤罪事件だ」と述べ、全員の有罪判決を取り消し、速やかに補償を行うための法律を作ることを約束しました。

Q.富士通はどう対処するのでしょうか?

富士通のヨーロッパ地域の代表は下院で、システムが導入された当初から欠陥を把握していたことを認めて謝罪し、「道義的責任がある」と述べ補償に貢献する考えを示しました。問題の富士通の子会社は、もとはイギリス政府の後押しを受けて設立されたIT企業で、98年に富士通の完全子会社となりました。

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結果として冤罪事件に加担した富士通の責任は免れませんが、郵便局長らに無実の罪を着せた上、システムの欠陥の事実を隠ぺいしたポスト・オフィスと、冤罪事件を長年見過ごしてきたイギリス政府の責任は重大です。どこまで真相を解明し、汚名を着せられた人たちの名誉を回復させることができるか国中が注目しています。


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二村 伸  専門解説委員

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