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なぜ米ウクライナ支援は停滞しているか?

髙橋 祐介  解説委員

ロシアと戦うウクライナに対しアメリカからの巨額の軍事支援が滞っています。いったいなぜでしょうか?髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラスト、バイデン大統領が武器や弾薬を詰め込んだ箱をウクライナに届けようとしている?
A1)
バイデン大統領は、ウクライナに対する支援として、614億ドル=日本円で9兆円規模の追加予算を議会に要求しています。従来の予算はすでに先月で底をつき、ロシアによる攻勢に、ウクライナがどこまで持ちこたえられるかをバイデン政権は強く懸念しています。

Q2)
アメリカ議会はウクライナ支援に反対なのですか?
A2)
議会下院で多数派を占める共和党のジョンソン下院議長は、「不法移民対策が最優先だ」として、追加予算の承認を先延ばししています。共和党議員全員が支援に反対しているわけではなく、予算の優先順位が問題だと言うのです。
アメリカ南部のメキシコとの国境で確認された不法移民は、去年9月までの1年間で250万人と過去最多を記録しました。とりわけ“国境の壁”を建設したトランプ前大統領が、政権復帰をめざすのにつれて、まるで駆け込みのように、国境を許可なく越えてくる人が増え、先月も1日あたり平均で7,000人に上っています。
このため、他国の防衛を支援する前に“アメリカ国内の国境対策の強化を急ぐべきだ”とする意見が高まっているのです。

Q3)
では国境対策を強化した上で、ウクライナ支援も行えば良いのではないですか?
A3)
それはそうなのですが、民主・共和両党は、今年度予算の歳出総額では合意しましたが、個別の項目は審議が紛糾し、当面のつなぎ予算も、今週末と再来週末で期限を迎えます。このため議会は、政府機関の閉鎖を回避しようと、つなぎ予算の期限を3月上旬まで延長する案を審議し、このつなぎ予算には含まれないウクライナ支援は、いわば後回しになっています。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから来月で2年になります。最大の支援国アメリカは、選挙が近づくのにつれて、両党の政治的なかけ引きが激しくなり、支援の停滞は、さらに長引く可能性もありそうです。


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髙橋 祐介  解説委員

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