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岐路に立つ北極海LNG

石川 一洋  専門解説委員

日本も参加したロシアの北極海の巨大な液化天然ガスプロジェクトが、アメリカからの制裁の対象となり、日本は難しい立場に立たされています。石川一洋専門解説委員に聞きます。

Qこの巨大な施設はなんですか

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Aロシアの北極圏ヤマル半島の巨大な液化天然ガス製造施設アークティック2です。完成すれば年間2000万トン近いLNGを生産する計画で、北極海航路でヨーロッパとアジアに輸出しようという巨大プロジェクトで、ロシアは春にも生産を開始するとしています。
交通の便利な港で組みたてた施設を海上輸送で未開の極地に運び埠頭に設置するモジュール方式と呼ばれる工法で建造された巨大工場です。ロシアの民間ガス会社でプーチン大統領と繋がりの深いNOVATEKが主体となり、日本、フランス、中国が資本参加しています。
しかしそのプロジェクトそのものを潰すとして、アメリカが去年11月経済制裁の対象に加えました。日本もその影響をもろに被った形です。

Q日本にどんな影響があるのですか?

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A日本はプロジェクトに参加を決定したのは2019年、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の3年前です。日本政府は、侵攻前からすでに動き出していたプロジェクトで日本のエネルギー安全保障にとって重要だとしてアメリカに制裁しないよう求めてきました。しかしアメリカはまだ生産が始まっていない“新規”のプロジェクトで、ロシアのエネルギー権益を増大させるとして制裁に踏み切りました。LNG輸出国のアメリカとしては競争相手を排除するという思惑もあるでしょう。
プロジェクトには民間から三井物産も参加しており、日本を含む参加企業はアメリカ政府から制裁を受ける恐れもあります。日本としては、そうしたことを避けるために今後アメリカとのハイレベルでの交渉も必要となるでしょうが、撤退あるいは凍結という苦渋の決断を迫られることになるかもしれません。

Qプロジェクト自体も沈没するのでは?

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Aロシアは日本や欧米に販売できなくても、中国やインドなどグローバルサウスにいくらでも買い手があると強気の姿勢を崩していません。2024年はエネルギー分野でも米ロが正面から戦う年となりそうです。


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石川 一洋  専門解説委員

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