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2024年 ロシア軍事侵攻が影落とすパリ五輪

安間 英夫  解説委員

2024年。ことしはパリでオリンピックが開かれますが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が影を落とすことになりそうです。

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Q)パリオリンピックが開かれる新しい年、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えましたね。
A)
はい。年末年始もミサイルなどによる攻撃が止むことはありませんでした。
ロシアによる軍事侵攻が始まったのは2022年、北京での冬のオリンピックの直後だったので、ことし夏のパリ大会は、侵攻後初めてのオリンピックとなります。
IOC=国際オリンピック委員会は去年12月、ロシアと同盟国ベラルーシについて、国としての参加は認めず、選手については「中立な立場の個人資格」で参加を認めると発表しました。
そのうえで、
▼軍の関係者や軍事侵攻を積極的に支持する選手は認めないこと、
▼チームとしての出場は認めないこと、
また、
▼個人の参加についても具体的には各競技団体が判断すること、
▼大会にはロシアとベラルーシの政府関係者も招待されないことになりました。
ところがこの決定に、ウクライナ、ロシア・ベラルーシの双方が反発しています。

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Q)どのように反発しているのでしょうか。
A)
ウクライナ政府は、ロシアによる軍事侵攻で400人ちかくの選手やコーチが犠牲になったとして、どのような条件であっても両国の選手の参加を認めること自体「無責任」だと厳しく非難しています。
一方ロシアとベラルーシの政府も、両国の参加が制限され、決定は「差別的」だと主張しています。
ロシアは2018年のピョンチャンの冬の大会から国としての参加を認められていませんが、これまでは組織的なドーピングの疑いが理由でした。
しかし今回の決定は軍事侵攻が大きな理由となります。
ロシア国内では、ガザに侵攻するイスラエルの参加が認められるのはなぜなのかという不満もくすぶっています。

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Q)ロシアは今後どう対応するつもりなのでしょうか。
A)
プーチン大統領は、IOCの決定は差別的でオリンピックの精神に反している。また商業主義を強め、スポンサーの意向に左右されていると批判し、条件を分析して今後の対応を検討するとしています。
このようにプーチン大統領は主張しますが、これまで組織的なドーピング疑惑と軍事侵攻によって、スポーツ、そして「平和の祭典」とされるオリンピックをないがしろにしてきたのは、ほかならぬロシアだったのではないでしょうか。

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Q)オリンピックと国際政治を切り離すことは難しそうですね。
A)
そのことを改めて浮き彫りにしています。
国連総会では去年11月、パリオリンピック・パラリンピックの期間中、世界のあらゆる紛争の休戦を呼びかける決議が採択されましたが、ロシアは棄権しました。
またロシアは、パリオリンピックの後、友好国を集めたスポーツ大会を開催する計画で、このことは国際スポーツの分断を深めることにつながりかねません。
パリオリンピックがどのように行われるのか、ことしは、オリンピックと“戦争”の関係が問われる年となりそうです。


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安間 英夫  解説委員

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