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起訴取り消し裁判きょう判決 身柄拘束の責任は

清永 聡  解説委員

不正輸出の疑いで1年近く勾留されたあと、異例の起訴取り消しとなった会社の社長らが国と東京都を訴えた裁判の判決が、27日午後に東京地方裁判所で言い渡されます。責任はどこにあるのでしょうか。

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Q:拘置所に2人がいます。1人は遺影を抱えています。

A:横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長など3人は、機械を不正輸出した疑いで逮捕・起訴されました。
社長ら2人は1年近く勾留されたほか、顧問だった男性は勾留中にがんが見つかり、亡くなりました。
ところが、検察は刑事裁判の直前に起訴を取り消します。つまり、「えん罪」だったのです。

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Q:イラストは拘置所から法廷になりました。

A:今回争われているのは民事裁判です。
警察や検察の対応、特に捜査は違法ではなかったのか、そして逮捕・起訴で身柄の拘束を続けたことの責任が問われています。
また、機械は噴霧乾燥機で軍事転用の恐れがあるなどとされたのですが、実際は規制の対象にはあたらず、捜査は会社にも大きな損害を与えました。

Q:裁判ではどのような証言が出たのですか。

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A:現役捜査員の一人が、当時の捜査について「ねつ造」と証言するなど異例の展開をたどりました。
しかし、警視庁は「違法な捜査はなかった」と主張し続け、担当検察官は法廷で「間違いがあったとは思っていないので、謝罪の気持ちはない」と謝罪を拒んでいます。
ただ、問題は警察や検察だけだったのでしょうか。

Q:それはどういうことでしょうか。

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A:保釈を認めるかどうか決めるのは裁判官です。
社長らは保釈を求めましたが、裁判官は「証拠隠滅の疑い」を理由に何度も退けています。特に亡くなった男性は、弁護士が「入院治療の必要がある」と訴えたのに、保釈は合計7回も認められませんでした。早い段階で適切な治療を受けさせられなかったことに対する裁判官の責任はないのか。
人権どころか命まで失われる結果となったのに、当局は誰も謝罪も反省も示さない。これで国民の信頼は得られるでしょうか。捜査と司法の責任をどう判断するか。
判決は27日午後2時に、東京地方裁判所で言い渡されます。


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清永 聡  解説委員

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