NHK 解説委員室

これまでの解説記事

性暴力に立ち向かうノーベル平和賞受賞医師 アフリカの資源大国の大統領選に挑戦

二村 伸  専門解説委員

世界有数の資源大国であるアフリカのコンゴ民主共和国で20日、大統領選挙が行われます。選挙にはノーベル平和賞を受賞した医師が挑んでいます。何を訴えているのでしょうか。

C231220_1.jpg

Q.大統領選挙に立候補したノーベル賞受賞者とはどんな人物ですか?

紛争地域で性暴力の被害を受けた女性たちを支援し、5年前ノーベル平和賞を受賞した婦人科医のデニ・ムクウェゲ氏です。コンゴ民主共和国はかつてザイールと呼ばれ、1994年に自衛隊がルワンダ難民の救援活動を行いました。その東部では100以上の武装勢力が跋扈し、紛争下で数十万人とも言われる女性が戦闘員や兵士から性暴力を受け、「女性にとって世界で最悪の場所」と呼ばれてきました。ムクウェゲ氏は20年以上にわたって被害者の治療と精神的なケアを続けるとともに、国際社会にこの地域で生産されるレアメタルを購入しないよう訴えてきました。

Q.資源を買わないようにとはどういうことですか?

C231220_5.jpg

武装勢力の資金源となっているからです。スマートホンやパソコンのバッテリー、電気自動車の電池などに使われるコバルトは世界の生産量の半分以上を占めます。電子機器のコンデンサーや半導体などに使われるタンタルも世界1です。アフリカで2番目に大きいこの国では他にもダイヤモンドやプラチナ、金、石油などを抱える資源大国ですが、武装勢力が利権争いを続け子どもたちに過酷な労働を強いてきました。ムクウェゲ氏は何度も命を狙われながら政治の腐敗と搾取、人権侵害から人々を守るために戦い、選挙では「国家機能と治安の回復」を訴えました。

Q.その思いは通じるのでしょうか?

現職の大統領などと比べ政治的な基盤や資金力もないため厳しい戦いのようです。治安が悪く選挙が無事行われるかが最初の関門ですが、この国の行方は資源の安定供給にも影響するだけに日本にとっても他人事ではありません。

C231220_7.jpg

中国に対抗して日本政府は「資源外交の重点国」と位置づけ、資源探査などの協力関係の強化をはかっています。もちろん資源の確保も大事ですが、ムクウェゲ氏がめざす「正義と平和」の実現のためにも治安の回復と民主化を後押しすることも重要ではないかと思います。


この委員の記事一覧はこちら

二村 伸  専門解説委員

こちらもオススメ!