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ウクライナ"戦争疲れ"国民は士気を維持できるか

津屋 尚  解説委員

ウクライナ軍の反転攻勢は成果が得られないまま戦争が長期化し、ウクライナ国民の間には“戦争疲れ”が広がっているとの指摘も出ています。国際安全保障担当の津屋尚解説委員の解説です。

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Q:ウクライナに大きな暗雲が垂れ込めていますね。

A:半年をかけた反転攻勢の作戦は思うような成果を上げられず、ウクライナ軍は前進できないまま戦闘は膠着状態に陥っています。そして今後の戦いにも不透明感が漂っています。

Q:どういうことですか?

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A:最大の軍事支援国アメリカでは、ウクライナ支援の予算が、野党共和党の反対で議会の承認を得られず、年内に枯渇してしまう事態が現実味を増しています。
また、戦争の終わりが見えない中で、徹底抗戦を支えてきた「兵士たちの士気」と「国民の抵抗への意志」にも“戦争疲れ”が見え始めています。現地は厳しい冬を迎え、最前線で戦い続ける兵士たちは極度の緊張と疲労にさいなまれ、弾薬の不足に直面する部隊も出てきています。戦場から離れた都市でも、ロシアのミサイル攻撃などで犠牲になる市民が増え続けています。世論調査では、ウクライナ国民の大半が「勝利するまで戦い続けるべき」と答えていますが、1年前と比べるとその割合は徐々に減る傾向にあります。戦時下のウクライナでは60歳以下の成人男性は出国が禁じられていますが、これまでに2万人以上が国外に逃れようとして身柄を拘束されたと報じられているほか、賄賂を使って徴兵逃れをはかるケースも後を絶ちません。戦争が長期化する中で、兵員の確保も大きな課題です。

Q:こうした状況の中で、ロシアはどう出てくるでしょうか?

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A:ロシアは、ミサイルやドローンを使って、電力など市民生活に欠かせないインフラへの攻撃を再び激化させています。市民を疲弊させ、戦意をくじく狙いです。
ウクライナの兵士と国民が士気を保って、ロシアの侵略と戦い続けられるかどうは、力による現状変更を許すかどうかという世界の秩序にも関わる問題です。
この冬はウクライナにとっても、支援国にとっても、正念場の冬になりそうです。


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津屋 尚  解説委員

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