軍事的な挑発を強めている北朝鮮。その外交にこのところ変化がみられるといいます。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、具体的にどんな変化がみられるのでしょうか?
A1、3つ指摘したいと思います。
まずひとつは「韓国」の呼び方です。北朝鮮はこれまで韓国を独立した国家とは認めず「南朝鮮」などと呼んでいました。ところがこの夏頃から「大韓民国」という正式名称も使うようになったのです。
Q2、韓国を独立国家として認めるようになったということでしょうか?
A2、というよりはむしろ、もう自分たちと同じ民族、同胞ではない、祖国統一という理想はかなぐり捨てたと解釈すべきではないでしょうか。最近の冷え切った南北関係を象徴する変化だと思います。
もうひとつの変化は、9月のキム総書記のロシア訪問です。東西冷戦が終わり後ろ盾だったソビエト連邦が崩壊して以降、北朝鮮は中国への依存を強めてきました。キム総書記が最高指導者になって初めて訪問したのも中国でしたし、トランプ政権との米朝協議を行なった際にも、キム総書記は何度も中国を訪れて習近平国家主席と会談しています。ところがコロナで長く国を閉ざしていた後、最初に訪問したのは中国ではなくロシアでした。中国にばかり依存していた外交方針を修正しようとしているのかもしれません。
Q3、そしてもうひとつ3つ目の変化は?
A3、在外公館の閉鎖です。北朝鮮は去年4月の時点で世界各地に53の大使館や総領事館などを設置し、国際社会との窓口の役割を果たしていました。ところが今月になってその一部を撤収することを明らかにしたのです。すでにアジアやアフリカ、ヨーロッパで在外公館の閉鎖が確認されています。財政事情の悪化が理由とみられています。以上、3点指摘しましたが、こうした外交姿勢の変化は、北朝鮮が国際社会と協調するのではなく、内向きで独りよがりな姿勢をいっそう強めているからではないでしょうか。警戒すべき動きだと思います。
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