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補正予算案審議入り 正念場の岸田政権

成澤 良  解説委員

政府の新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案が、11月20日、国会で審議入りします。

Q)イラストでは、岸田総理大臣が土俵際まで押し込まれていますね。

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A)NHKの11月の世論調査で、岸田内閣の支持率は、発足以降、最も低い29%。
「危険水域」とも指摘される20%台まで落ち込みました。
岸田総理大臣にとっては、状況の打開が課題で、国会審議では、2つの「説明責任」がカギを握っています。

Q)それは何ですか。

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A)1つは、過去に税金を滞納していた財務副大臣をはじめ、3人の副大臣と政務官が不祥事で相次いで辞任したことについて、任命責任の説明を十分に果たせるかです。
野党側は「全く適材適所でなかった」と批判し、追及を強める構えで、与党内からも「極めて異常な状態」という指摘が出ています。
国民が納得できる説明を行い、信頼回復につなげられるかが問われています。

Q)もう1つの「説明責任」とは何ですか。

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A)減税と給付が柱の経済対策の必要性や効果についてです。
岸田総理大臣は、2024年の夏に所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくるために必要な対策だと強調します。
ただ、「国民に還元する」とした税収の増加分については、鈴木財務大臣が「すでに支出していて、減税を行えば、国債の発行額が増える」という認識を示し、ちぐはぐな印象も受けます。
野党側からは「事実と違うので、『還元』の発言を修正すべきだ」という批判が出ています。
「防衛力強化や少子化対策などの財源確保も必要なのに、なぜ今、減税なのか」という国民の疑問も完全には解消されていないのが実態です。
岸田総理大臣は、年内の衆議院の解散を見送りました。
国会審議で説明を尽くし、支持を回復させ、解散に打って出るタイミングをうかがいつつ、2024年秋の自民党総裁選挙での再選につなげたいのが本音だと思います。
態勢の立て直しに向けて、今が正念場と言えそうです。


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成澤 良  解説委員

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