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"プラスチック汚染防止条約" 交渉の行方と環境・健康への影響 リサイクルは?生産・消費削減も?

土屋 敏之  解説委員

◆13日からケニアでプラスチック汚染防止のための条約を作る政府間交渉

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日本でも先月、房総半島沖の深海で大量のマイクロプラスチックが見つかったとの発表がありましたが、世界的にプラ汚染は深刻化する一方で、このままだと2050年には海のプラごみの量が魚の総重量を超えるとの推計もあるほどです。
既に私たちが飲む水や呼吸する空気にもマイクロプラが含まれ長期的な健康への影響も懸念されています。
そこで、去年の国連環境総会で“プラ汚染をなくすための条約”を作る政府間交渉を行うことが決まり、今回はその3回目で、いよいよ条約の草案が示され本格的な議論が始まります。

◆条約交渉の焦点

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まず規制の範囲です。アメリカや中国、そして日本もプラごみが環境に流出しないよう適切なごみ処理やリサイクルの推進などが重要だとの立場ですが、EUや海洋プラごみの影響が大きい島嶼国など、プラスチックの生産や消費の段階から減らすことも必要だとの主張があります。
また、規制の強さ=例えば共通の削減ルールを義務づけるのか?あるいは各国の自主的な計画を重視するか?でも意見の隔たりがあり、途上国を支援する新たな基金を設立するのかなども焦点になります。

◆交渉の行方は?

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ウクライナやパレスチナ問題などで国際的な対立も際立つ現状では、拘束力の強い共通ルールの合意形成は容易ではないと思います。
一方で去年、世界的な大企業や金融機関など百数十社が、新たなプラ原料の使用削減も含む野心的な条約を求める企業連合を結成し、日本でも今月こうした企業連合が設立されました。
資源の循環利用や新素材は新たなビジネスになると考える企業も増えていて、こうした企業やNGOなどの声が交渉をどう後押しするのかも注目されます。


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土屋 敏之  解説委員

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