アフガニスタンから逃れてパキスタン国内に暮らす多くの人たちが、今月(11月)に入り強制送還させられる事態となっています。その背景を解説します。
Q、
何が起きているのでしょうか?
A、
アフガニスタンの隣国パキスタンには、民族的なつながりが深いことなどから、40年以上前の旧ソビエト侵攻以降、戦禍を逃れた多くのアフガニスタンの人たちが難民などとして暮らしています。
その数は400万人を超えるとされますが、パキスタン政府は、このうちの170万人について、許可などを持たない「不法滞在」だとして、今月から大規模な強制送還を始めたんです。
Q、
なぜでしょうか?
A、
理由として、国内の治安状況の悪化をあげています。
パキスタンは長年、アフガニスタン側から国境を越えてくる過激派のテロに悩まされてきましたが、おととしタリバンが復権して以降、その悪化が顕著となっています。
ことしに入ってから先月(10月)までに起きた自爆テロ24件のうち、14件について「アフガニスタン人が関わっていた」と指摘しているんです。
パキスタン政府は、タリバンの国内での取り締まりが不十分だからだと非難していて、今回の強制送還は、タリバン側に圧力をかける狙いがあったとみられています。
Q、タリバン側の反応は?
A、
「テロとは関係がない」として強く反発しています。
背景には、経済や雇用が悪化する中で多数の送還を受け入れれば、いっそう国内が混乱しかねないという懸念もありそうです。
さらに、別の懸念も指摘されているんです。
Q、
何でしょうか?
A、
強制送還の対象となった人たちには、タリバンと敵対していた前政権の関係者や人権活動家なども多く含まれているとみられているのです。
国連や国際的な人権団体は、「タリバンに弾圧されるおそれがある」として、パキスタン側に中止を求めるとともに、すでに送還された人たちへの人道支援も広く呼びかけています。
住み慣れた土地を捨てざるを得なかったアフガニスタンの人たちにどう救いの手を差し伸べるのか、新たな課題となっています。
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