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どうなる?樹木伐採 神宮外苑の裁判始まる

清永 聡  解説委員

東京・明治神宮外苑の再開発計画で、新宿区が樹木の伐採を許可したことが違法だとして、反対する住民などが許可の取り消しを求めた裁判が、6日から東京地方裁判所で始まりました。

Q:こちら明治神宮外苑の様子です。

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A:再開発の計画の認可は「東京都」、この部分の伐採の許可は「新宿区」で、6日に始まったのは区を訴えた裁判です。
伐採される計画の樹木ですが、事業者は「高さ3メートル以上の743本で植樹も行う」としていますが、訴えによると「区が許可した樹木の伐採は、低い木も含めるとおよそ3000本」だということです。

Q:神宮外苑は4列のいちょう並木が有名です。こちらはどうなるのですか。

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A:心配な人もいると思います。事業者はいちょう並木については “保全する”としています。
計画ではこのほか「ラグビー場」をいまの第二球場の近くに、「明治神宮野球場」はホテルを併設していちょう並木の近くに建て替えます。
このほか商業施設が入る複合ビルなども建てられる計画です。完成は2036年ということです。

Q:裁判での双方の主張はどのようなものですか。

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A:6日は第1回の弁論が開かれました。反対する住民側は「本来ここは容易に木の伐採が認められない地域なのに、新宿区が議会などに報告せずに地域の区分を変更した。民主的なプロセスを経ていない」などと主張しています。また、景観が損なわれることや気候変動なども主張しています。
一方で新宿区は「適切な手続きをとって許可している。原告は景観が損なわれると訴えているが、法律で保護されるものではない」など争う方針を示しました。

この問題をめぐっては、今年亡くなった坂本龍一さんが都知事に見直しを求める手紙を送っていたほか、9月にはユネスコの諮問機関「イコモス」が中止を求める警告の文書を送るなど波紋も広がっています。

Q:今後はどうなるのでしょう。

A:事業者は東京都の要請に応じて伐採は「年明け以降」としています。ただ、原告は司法の判断まで伐採しないよう求めています。
樹木は一度切ってしまうと、後戻りできません。それだけに、行政は今後も慎重な検討と住民側との十分な対話が望まれます。


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清永 聡  解説委員

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