「世界第三位の経済大国」といわれてきた日本が、ことしの名目GDP・国内総生産でドイツに抜かれて四位になる、という見通しが示され、注目されています。
櫻井解説委員です。
Q アメリカ・中国に次ぐ経済大国と位置付けられてきた日本ですが、ドイツに逆転されかけていますね?
A はい、IMF・国際通貨基金の予測によりますと、
▼2023年の日本の名目GDPはドルベースで4.2兆ドルあまり。
▼一方、ドイツは4.4兆ドルを上回るとみられています。
アメリカの26兆ドル、中国の17兆ドルにくらべると、その差は大きくはありませんが、2028年までの予測では2つの国の順位が再び入れ替わることはなく、日本が四位に定着する可能性も高そうです。
▼円安でGDPの数字がドル換算で目減りしていることや
▼ドイツで急激なインフレがすすんだことが直接の要因ですが、
ウクライナ侵攻の影響で景気が低迷しているドイツに日本が抜かれる。
となると、日本の経済成長力の弱さ、が懸念されるところです。
Q なぜ、そこまで日本経済は伸び悩んでいるのでしょうか。
A 人口減少に伴う市場の縮小が最大の要因とされてきましたが、ドイツの人口が日本のおよそ3分の2であることを踏まえると、ほかにも理由がありそうです。その一つが賃金です。
ここ30年ぐらいの、より長期的な視点でみると日本の名目賃金が1.1倍しかあがらなかったのに対し、ドイツは2.1倍もあがっています。
また研究開発や教育への支出、といった将来への投資が、これまでほかの先進国にくらべて少なかったことも響いているといえそうです。
Q 日本の経済成長が弱いと、その影響も心配されますね。
A 経済規模が大きいほどその国の人々が幸せになる、というわけではありませんが、一方で、人材の流出や、国際社会における発言力の低下も懸念されます。
IMFは2026年には今度はインドが日本を抜き、わずか3年で日本は5位に下がるとみています。緊迫する国際情勢のもと、日本が一定の存在感を保つためにも、思いきった賃上げを続けることや、未来への投資を増やして、力強い経済を取り戻す努力が一層求められています。
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