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緊迫イスラエル・パレスチナ情勢 ロシアの思惑

石川 一洋  専門解説委員

イスラエルがガザへの地上作戦の準備を進める中、ロシアのプーチン大統領はどう動こうとしているのでしょうか。石川一洋専門解説委員に聞きます。

Qプーチン大統領は何をしているのですか

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A中東各国の首脳に電話をしながら、反アメリカの双頭の鷲を動かそうとしています。
アメリカの中東政策は失敗だとして、パレスチナ国家樹立の問題を真剣に取り上げるよう訴えています。イスラエル支持のアメリカとは対峙して、パレスチナ寄りの姿勢を示しています。イランのライシ大統領には、民間人への攻撃を非難はするもののハマスの名指しは避けています。後ろ盾でもあるイランとの関係を重視しているのです。

Q次の電話の相手は?

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A次はアラブの盟主サウジアラビアのムハンマド皇太子です。プーチン大統領は、パレスチナ問題の解決をせずにイスラエルとサウジアラビアなどの関係を正常化しようとしてきたアメリカの政策が破綻したとして、より一層ロシアと連携するよう皇太子にささやいています。プーチン大統領が悩んでいるのはイスラエルのネタニヤフ首相にどう話すかです。

Qネタニヤフ首相は随分怒っていますね。

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Aはい裏切られたと憤慨しています。プーチン・ネタニヤフは「テロとの戦い」で連携してきました。またイスラエルには旧ソビエトからの移民が大勢いて、ロシアとは深い関係にあります。イスラエルはロシアのウクライナ軍事侵攻に対しては、対ロシア関係を重視して、ロシアに対する経済制裁には参加せず、ウクライナへの本格的な軍事支援にも踏み切っていません。それなのに!と怒っているでしょう。
プーチン大統領はイスラエルが反ロシアに移りウクライナへの軍事支援に踏み切るのは得策ではないと考えて、イスラエルの利益も考慮すると宥めています。
しかしイスラエル国内では、ロシアへの怒りが広がり、対ロ関係を見直すべきだという声も強まっています。

プーチン大統領、「パレスチナ問題の解決」をといわば正論を掲げていますが、その実現よりも反アメリカに今回の危機を利用しているようです。
人道危機が深まる中、危機の拡大防止にロシアが何をできるのか、問われているように思います。


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石川 一洋  専門解説委員

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