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減税効果は?解散可能性は?臨時国会召集

曽我 英弘  解説委員

岸田首相が視野に入れる所得減税の効果は?年内の衆院解散に踏み切る可能性は? 20日召集される臨時国会の行方を展望する。

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論戦の行方をワールドカップで盛り上がるラグビーのボールの軌道になぞらえてみた。岸田首相が今国会でトライを目指すのが、物価高を受けた新たな経済対策。その裏付けとなる補正予算案の速やかな成立だ。ただ経済対策を指示する中で飛び出した「税収増の国民への還元」の具体策として減税、なかでもその対象に所得税も視野に入れたことで、今後の国会審議はどう転がるか見通せない。

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自民・公明両党から要望のあった、所得が低い世帯などへの給付措置に加え、岸田首相は20日、期限付きの所得税の減税を検討するよう与党に指示する。減税自体は野党側にも求める声がある。ただ減税の実施には法改正などが必要だ。開始は早くても来年度と時間がかかり現在の物価高への対策として即効性に欠ける。また一時的な減税は消費にまわりにくく効果が薄いともされている。それだけに岸田首相が減税の規模、対象、効果、そして開始する時期をどう考えているのか。一方で防衛費増額や少子化対策に伴う負担増、年末に迫る財源確保との整合性について国会でしっかり説明し、議論することが重要だ。さらに過去には時の首相が減税を表明した直後の国政選挙で敗北し退陣に追い込まれたケースや、減税そのものが頓挫した例もある。政権内には国民の期待が先行することを心配する声もあり、紆余曲折も予想される。

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一方で衆議院解散の観測はというと、内閣改造後も支持率が上向かず日程的にも窮屈なことから下火になっていた。ただこのタイミングで岸田首相自ら減税論議に火をつけたことで再燃する可能性も出てきた。国会召集前に旧統一教会に対する解散命令を裁判所に請求したことも、こうした見方を後押ししている。
ただ実質賃金が17か月連続で減少し、マイナカードをめぐる問題の総点検も11月佳境を迎えるなど課題は山積している。また旧統一教会の被害者救済にあてるため教団の財産をいかに保全するかや、一連の事件を受け性被害・児童虐待の防止も急務となっている。内閣改造後初となる臨時国会は週明け、岸田首相の所信表明演説で論戦をキックオフするが、腰を落ち着けて議論を深め、責任を果たせるか注目だ。


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曽我 英弘  解説委員

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