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中国 中東への関与強化はどこまで?

宮内 篤志  解説委員

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの衝突が続く中、中国の対応にも注目が集まっています。その背景を解説します。

Q、
イラストは綱渡りをする習近平国家主席ですが。

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A、
はい。今回の衝突をめぐって、中国がどのようにバランスをとりながら、独自の外交を展開するのか注目されています。
といいますのも、中国はことし3月、イランとサウジアラビアの関係正常化を仲介したほか、パレスチナ問題をめぐっても、習主席が6月に暫定自治政府のアッバス議長を中国に招いて会談し、和平の実現のために協力する考えを伝えました。
こうした一連の動きは、中東地域におけるアメリカの存在感の低下が指摘される中、その隙を突くように、中国がこの地域への関与を強めたものとも受け止められていたんです。

Q、
中国は、今回の衝突についてどのような姿勢なのでしょうか?

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A、
中国は「我々はイスラエルとパレスチナの共通の友人だ」として即時停戦を求めています。
ただ、民間人に犠牲が出ていることは強く非難しながらも、ハマスに対する直接の非難は避けているんです。
こうした中、今月14日には王毅外相がサウジアラビアの外相と電話で会談し、「イスラエルの行為は自衛の範囲を超えている」と述べました。
ガザ地区への地上侵攻の可能性が高まる中、イスラエル側に自制を求めた形です。

Q、
中国側の狙いはどこにあるのでしょうか?

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A、
イスラエルを支持するアメリカと一線を画す思惑があるとみられます。
そこには、アメリカに反発する国々からの幅広い共感を得ることで、アメリカ主導の国際秩序に対抗する狙いも込められていると思います。
ただ一方で中国は、イスラエルとも経済やハイテクを中心としたパートナーシップ関係を築いているうえ、過去には戦闘機の開発という軍事分野でもイスラエル側から技術供与を受けたという根強い指摘もあるほどです。
それだけに中国が今後、イスラエルとハマス双方の間でバランスをとりながら、事態の沈静化に向けてどのような行動を示すのか、そして、それがこの地域における中国の発言力強化につながるのかが注目されます。


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宮内 篤志  解説委員

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