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九州電力が昼間の電気料金を一部実質無料に!そのワケは?

水野 倫之  解説委員

電気料金が高止まりする中、九州電力は、昼間の一部の電気料金を実質無料とする取り組みを期間限定で始めた。水野倫之解説委員の解説。

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誰でも無料というわけではなく条件があり、対象はオール電化で、省エネアプリを利用するなどの条件を満たしている一般家庭。

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今月と来月限定で、九電がアプリで翌日の昼間の時間帯を指定してくるので、その時間帯に使った電気代分がポイントで還元され、実質無料となる仕組み。これまでに5万世帯が参加。
実質無料にするのは太陽光など再エネの有効利用のため。
日照条件がいい九州では太陽光が原発事故以降15倍以上に増えたこともあり、冷暖房需要が減る季節を中心に電気が余るようになった。

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電気は発電量と使う量のバランスが崩れると、広域停電となってしまうので、九電は火力発電を抑制するなどしても余る場合に、太陽光などの再エネを強制的に止める「 出力制御」を頻繁に行っている。
昨年度は15万世帯の年間使用量分の再エネが事実上捨てられた。
再エネは燃料費タダでCO2も出さないので、もったいなく、社会的な損失と言えると思う。
この出力制御、ほかの大手電力管内に広がり、まだやっていない東電管内も時間の問題。
対策としては余った電気を蓄電池に貯めればいいがまだコストが高く、政府は火力の出力をさらに抑えることにしているが、十分ではない。
そこで電気を使う側に対応してもらおうと実質無料を打ち出したわけ。

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電気を使う私たちは、昼間家にいない場合は、例えば朝夕使っていた洗濯機、乾燥機をタイマーセットして昼間に動かしたり、電気自動車への充電を同じように昼間に行うことなどが考えられる。
ただこれだけで出力制御が回避できる量とはならないので、九電はオール電化に限ることなく一般家庭すべてを対象としてほしいし、ほかの大手電力も実質無料を検討し、再エネの有効活用を進めてほしい。


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