韓国では、来年4月に投票が行われる、4年に1度の総選挙まで半年となりました。
与野党の攻防が今後激しさを増すとみられます。
すでに駆け引きが始まっている現状や選挙戦の見通しはどうなっているのでしょうか。
Q 半年後に迫った韓国の総選挙、焦点は何ですか?
A 韓国の国会は一院制で定数300。現在、その過半数の168議席を握る最大野党から現有111議席の少数与党がどれだけ議席を奪い返すのかが焦点です。
韓国の国会議員の任期は4年で解散はありません。コロナ禍の2020年以来となる総選挙は来年4月10日に投票が行われ、保守系の与党「国民の力」と革新系の最大野党「共に民主党」の2大政党を軸に争われる見通しです。
ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置づけられる今度の総選挙。現時点で選挙戦の“顔”となるのは、政権を支える与党がユン大統領、対する最大野党はイ・ジェミョン(李在明)代表。去年3月の大統領選挙で、わずか0.73ポイント差で勝敗を分けた因縁の2人です。
Q 与野党の駆け引きはすでに始まっているようですね?
A はい。最大野党のイ代表は、自治体のトップだった当時、開発事業をめぐって民間業者に便宜を図ったり、北朝鮮への不正送金に関与したりしたとして、背任などの疑いで検察から逮捕状を請求されました。
韓国の国会議員には、会期中は国会の同意なしに逮捕されない不逮捕特権があります。このため国会では9月、イ代表の逮捕同意案が採決され、与党議員に加え最大野党の一部議員も造反して賛成多数で可決されたのですが、結局、裁判所が拘束の必要はないとして請求を棄却しました。
最大野党は内部対立をさらけ出したものの、1987年の民主化以降、例のない現職の政党トップの逮捕を寸前で免れたことで、「政治弾圧だ」として攻勢を強める構えです。これに対して政権与党は、「イ代表は疑惑だらけだ」と世論に印象づけ、イメージダウンを図りたい考えです。
Q 半年後の総選挙、どうなりそうですか?
A 現時点で見通すのは難しい状況です。世論調査機関「韓国ギャラップ」の直近の調査では、両党ともに支持率が33%ときっ抗していて、およそ3割を占める無党派層の取り込みがカギとなります。
来年5月で発足から2年を迎えるユン政権。与党が勝利すれば、国会のねじれが解消され残る3年の任期中は法案を通しやすくなって一定の求心力を維持できます。一方、最大野党に敗北すれば、その後の政権運営に影を落とすのは避けられません。与野党の攻防は今後激しくなるとみられます。
太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で政権側が示した解決策の撤回を求めたり、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に激しく反発したりと、日本に強硬なイ代表率いる最大野党。党勢を拡大しようと、対日関係を重視するユン政権の外交姿勢への批判を一段と強めることも予想されます。
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