ロシアがウクライナに侵攻してから1年7か月あまり。ウクライナと隣国ポーランドが農産物の輸出入をめぐって対立するなど長期化に伴い支援疲れともいえる動きが各国で見られ始め、ウクライナ情勢への影響が懸念されます。
Q.ゼレンスキー大統領の行く手を阻んでいるのは投票箱のようですが?
はい。ポーランドは次の日曜日、15日に総選挙を控えていまして、これが政府の姿勢を強硬にさせています。これまでポーランドはウクライナを積極的に支援してきましたが、ロシアの侵攻でウクライナ産の穀物が黒海に代わり陸路東ヨーロッパ経由で輸出され、国内に安い穀物が流入したため与党の支持基盤である農家を守るためEUが輸入制限の期限とした先月半ば以降も独自に禁止措置を続けてきました。これをウクライナのゼレンスキー大統領が国連総会で批判したことにモラウィエツキ首相は激怒し、ウクライナへの新たな武器の供与を止めると表明、さらに大統領に対して「二度とポーランドを侮辱するな」と怒りをあらわにしました。
Q.選挙後は緊張が緩和されるのでしょうか?
選挙戦では与党の右派政党「法と正義」が、EUの大統領もつとめたトゥスク元首相率いる野党を一歩リードしていますが、その差はわずかです。単独での過半数は難しく反移民を掲げウクライナ支援にも批判的な右派政党との連立政権ができれば、ウクライナやEUとの溝が深まりかねません。さらにウクライナに厳しい姿勢を見せているのはポーランドだけではないのです。
Q.他にもあるのですか?
ハンガリーとスロバキアもウクライナ産穀物の輸入禁止措置を続け、ハンガリーのオルバン首相は先月、ウクライナ国内のハンガリー系住民の権利が守られていないとして権利が回復されるまで国際的な問題ではウクライナを支持しないと表明。スロバキアでは総選挙でウクライナへの軍事支援に反対する左派政党が第1党になりました。ヨーロッパ各国で支援疲れともいえる状況が見られ始め、アメリカではウクライナ支援の予算のめどが立たないなど、このままではプーチン大統領の思うツボです。各国の足並みが乱れれば今後のウクライナ情勢をも左右しかねません。
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