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男性のための性暴力被害ホットライン

木村 祥子  解説委員

ジャニーズ事務所の性加害の問題をめぐり「誰にも相談できなかった」といった証言が寄せられたことから、政府は同様の問題を防ぐため、男性専用の電話相談を行っています。詳しく解説します。

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Q①:こちらは2台の電話ですね。

A①:国は9月22日から、男性に特化した性暴力被害のホットラインを開設しました。
右側が18歳未満の男の子やその保護者が利用できる「子ども専用」0120-210-109、左側が18歳以上の「大人専用」0120-213-533の電話番号です。

Q②:初めての男性専用のホットラインということで、これまで男性はどうしていたのでしょうか。

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A②:性別を問わず利用できる全国共通番号の「#8891(はやくワンストップ)」などを設けて相談に乗ってきました。しかし利用者の大半は女性でした。
また、内閣府がおととし、全国の20歳以上の男女およそ5000人を対象に行った調査で、性暴力などの被害にあったと答えた男性のうち、およそ7割が「どこにも、誰にも相談しなかった」と答えました。

Q③:どうしてなのでしょうか?

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A③:調査では「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」「相談しても無駄だと思ったから」「世間体が悪いと思ったから」などといった回答が多くありました。

Q④:相談がしづらかったということで、今回、男性専用のホットラインができたのですね。

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A④:はい。「子ども専用」が 毎週金曜日と土曜日の午後4時から午後9時まで、大人専用が土曜日のみで午後7時から午後9時までで、12月23日まで開設されます。いずれも臨床心理士などの専門家が対応し、必要に応じて医師や弁護士などにつなぎ、支援を行うということです。また、大人専用の相談員はすべて男性が対応するということです。
長年、相談員をされている方に話を聞くと被害にあった人の中には「男性が被害に遭うはずがない」とか「男性なら抵抗できるはず」という事を周囲から言われ、二重、三重に苦しんだという人もいるということです。
私たちの心の中に「男だから、女だから」といった性別による無意識の思い込み=これを「アンコンシャス・バイアス」と言いますが、知らず知らずのうちに、相手を傷つけるような発言をしていないかを意識することが大切だと思います。
例えば、相手の表情が曇ったり、声のトーンが変わったりしたら、少し立ち止まって考えてみてほしいと思います。
そして性暴力は性別にかかわらず「断じて許さない」ということを、改めて社会全体で共有していくことが大切だと感じました。


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木村 祥子  解説委員

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