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連合会長再選も政府・与野党対応で前途多難

成澤 良  解説委員

日本最大の労働組合の中央組織、連合は、10月5日から2日間、定期大会を開き、芳野会長が再選される見通しです。

Q)再選なのに、浮かない表情ですね。

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A)政府や与野党への対応で悩ましい事態に直面しているからです。
連合が支援する国民民主党には「連立政権に加わるのではないか」という憶測がくすぶり続けています。
こうしたなか、岸田総理大臣は、連合傘下の労働組合「電機連合」の出身で、国民民主党の元参議院議員、矢田稚子さんを、賃上げや雇用を担当する総理大臣補佐官に起用しました。
岸田政権側には「野党の分断を図りたい」「選挙で労働組合の協力を得たい」といった思惑もあるとみられます。

Q)その思惑どおりにいくのでしょうか。

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A)簡単ではなさそうです。
連合は「政権交代可能な二大政党的体制」を目指していて、国民民主党の連立政権入りは、連合が割れる可能性もあるとして、反対です。
今回の連合の定期大会に、自公政権の総理大臣としては16年ぶりに岸田総理大臣が出席する予定です。
芳野会長にとっては、かつての同志が引き抜かれる形になったこともあり、政府・与党との距離感をどのようにとるかが問われています。

Q)一方、野党とはどうでしょうか。

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A)立憲民主党と国民民主党の関係が、悩みの種になっています。
両党を支援する連合からは、次の衆議院選挙で候補者調整を期待する声が出ています。
これに対し、国民民主党の玉木代表は「主要政策で考え方が異なる」として、連携に否定的です。
年内の衆議院の解散もささやかれるなか、芳野会長が“仲介役”を十分に果たせているかには疑問符がつきます。
ことしの春闘は、およそ30年ぶりの高い水準の賃上げになりました。
連合初の女性会長としてジェンダー平等推進をけん引し、注目度を高めた芳野会長ですが、政治との関係で、前途多難の2期目の“船出”になりそうです。


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成澤 良  解説委員

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