NHK 解説委員室

これまでの解説記事

いらない土地は国へ? 国庫帰属制度で初の土地引き取り

清永 聡  解説委員

相続した不要な土地を、国に引き渡すことができる制度が4月に始まり、法務省は3日、初めて2か所の土地を引き取ったと発表しました。どのような仕組みなのでしょうか。

C231004_1.jpg

Q:イラストは、持ち主と国が土地を押しつけ合っています。

A:この仕組み「相続土地国庫帰属制度」といい、今年4月にスタートして10月で開始から半年になります。相続を受けるなどしたものの利用も売却も難しい土地を、国に引き渡すことができるという制度です。
ただし、いくつも条件があってそう簡単ではありません。

Q:どんな条件ですか。

C231004_4.jpg

A:土地の上に建物がないこと。危険な崖がないこと、担保になっていないこと。権利関係に争いがないことなどです。さらに、負担金も払う必要があります。

Q:家があったら壊さないといけないのですか。それに土地をあげるのに、お金も払わないといけないのですか。いくらでしょう。

A:原則20万円。市街地の宅地だともっと高く、例えば100平方メートルでおよそ55万円になります。
国に戻される土地が増えると、管理が新たな国の負担になります。そこで負担金に加えて厳格に審査しているわけです。

C231004_5.jpg

法務省が8月末でまとめたところ、全国の相談件数およそ1万4000件に対して、申請件数は885件。
そして法務省は3日初めて、9月に富山県内の2か所の宅地を引き取ったと発表しました。全体としてみればまだごく一部です。

Q:土地を持ってきた人たちがそっぽを向いてしまいました。

C231004_8.jpg

A:要件や審査があまりに厳しければ、管理されないまま宙に浮いた土地が増加してしまいます。そうなると地域が荒れ果てて、国土の荒廃にもつながります。
これまで「土地は財産」でした。しかし過疎化と人口減少で、利便性の低い土地はどうやら必ずしも「財産」ではなく「不要なもの」になりつつあるようです。

Q:この制度は、どこに相談すればよいのですか。

A:最寄りの法務局で相談に対応しています。遠い土地の話でも無料で相談に乗ってくれるということです。まずは問い合わせて、あらかじめ相談の予約を取ってほしいということでした。
この制度、今後は「地域を守る」という視点から、利用しやすい仕組みにしていってほしいと思います。


この委員の記事一覧はこちら

清永 聡  解説委員

こちらもオススメ!