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バイデン大統領 危機は思わぬ方角から?

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのUAW=全米自動車労働組合のストライキに参加したバイデン大統領について、髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1.
けさのイラストは、バイデン大統領がドミノ倒しの中心に?
A1.
激戦州ミシガンのピケに立ち、メガフォンを握ったバイデン氏。現職の大統領が労使交渉に中立の立場をとる慣例をかなぐり捨てたのは、再選に向けて自らの支持基盤をトランプ氏に奪われまいとするためでした。全米自動車労組がストに突入してから29日で2週間。組合側は、交渉に進展がなければ、ストをさらに拡大して長期化も辞さない構えを見せ、経済への影響が心配されています。

Q2.
大統領の視線とは別の方角からもドミノが倒れそうですが?
A2.
議会下院は、次男ハンター・バイデン氏のビジネスをめぐり、大統領の弾劾に向けた調査を開始し、初の公聴会が開かれました。大統領は不正への関与を全面的に否定していますが、野党・共和党は「大統領は説明責任を果たすべきだ」として追及しています。
一方、収賄の罪で起訴された与党・民主党の重鎮メネンデス上院議員は、外交委員長を辞任しましたが、無罪を主張して議員辞職を拒み、バイデン政権も対応に苦慮しています。
さらに共和党の保守強硬派は、新たな会計年度の歳出法案に反対して、つなぎ予算の審議も拒み、この週末に決着しなければ、10月1日から政府機能の一部閉鎖を余儀なくされそうです。

Q3.
政府機能が閉鎖されたらどのような影響がある?
A3.
連邦職員のうち、業務を休めない人は無給で働き、自宅待機や解雇を強いられる人もいます。雇用統計などは発表を取りやめ、博物館や国立公園などの一部も閉鎖されそうです。
仮に政府機能が閉鎖されたら、この10年で4回目。上下両院で多数党が異なる「“ねじれ議会”のいわば恒例行事だ」と冷ややかな見方がある一方で、長期化したら経済への打撃も深刻になるでしょう。トランプ前大統領と再対決した場合、平均支持率で逆転されてしまったバイデン大統領。危機は思わぬ方角から押し寄せてくるかも知れません。


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髙橋 祐介  解説委員

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