原発から出る核のごみの処分地の調査について、長崎県対馬市は受け入れない判断を示した。原子力担当の水野倫之解説委員の解説。
調査を受け入れない判断は議会最終日のきのう、比田勝市長が表明。
処分地選定に向けては政府が、第一段階の文献調査をする自治体を公募していて、今月、市議会が、調査受け入れ推進の請願を採択していた。
ただ受け入れの権限は市長にあり、その判断が焦点となっていた。
調査を受け入れない理由について市長は市民の合意形成が不十分なことが最大の理由だと説明。
推進派が、調査で得られる交付金20億円で人口減少対策をと訴えたのに対し、反対派が漁業や観光の風評被害の懸念を訴え反対集会を開くなど市民に分断が起きているとしている。
また、地震など想定外の要因による安全性への懸念が排除できないことも、理由に挙げた。
そして、今回の判断に衝撃を受けているのが、政府。
核のごみは地下深くに10万年隔離するが、安全のためにもより安定した地盤を選ぶ必要があり、政府は少なくとも10か所の自治体で地盤調査を行いたい考え。
しかし3年前に調査が始まった北海道の2町村以降、手を挙げる自治体がなく、対馬への期待が高まっていただけに落胆しているわけ。
政府は、トップの意向が重要だとして、全国の100以上の自治体のトップに直接会って事業の必要性などを説明し、関心をもつ自治体を増やしたい考え。
と、同時に引き続き対馬の動きを注視。
というのも対馬市では半年後に任期満了に伴う市長選挙が予定されていて、比田勝市長もきのう立候補を表明。
現段階でほかに立候補表明者はいないが、選挙となれば核のごみが大きな争点になることも考えられ、政府は今後市民への説明会なども検討していきたいと。
対馬での核のごみの議論、今回で終わりとはならない可能性もあり、しばらくはその動向に関係者の注目が集まる。
この委員の記事一覧はこちら