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スペイン 新政権に入るのは極右か独立派か

二村 伸  専門解説委員

極右政党の政権入りなるか注目されたスペインで、27日、国民党党首の首相指名選挙が行われ、新政権樹立に向けた動きが大詰めを迎えています。

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Q.イラストはサッカーですね。左右両派によるボールの奪い合いとなっていますね。

ボールを持っているのは総選挙で第1党となり、国王から組閣要請を受けた中道右派の野党・国民党です。27日、350議席からなる下院で、フェイホー党首を首相として信任するかどうか投票が行われます。極右政党のVOXとの連立が注目されましたが、反イスラムと保護主義的な政策を掲げるVOXとの連立を多くの政党が拒んでいるため過半数は難しい情勢です。

Q.そうすると今後どうなるのでしょうか?

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27日にフェイホー氏が首相に選出されなかった場合、29日あらためて投票が行われます。国民党が首相選出に失敗すれば、ボールは第2党の社会労働党にわたり、サンチェス首相に組閣のチャンスが回ってきます。ただ、サンチェス首相も下院の過半数の票を得るためにはカタルーニャ州の地域政党の支持が必要でして、こちらもまた問題を抱えています。

Q.問題とはどういうことですか?

バルセロナを中心とするカタルーニャ州は独立運動がさかんで、6年前、州政府が独立を求めて住民投票を強行し、プチデモン州首相らは国家反逆罪などで起訴され、ベルギーに亡命しました。そのプチデモン氏が率いているのがカタルーニャ州の地域政党「ジュンツ」で、サンチェス首相を支持する見返りに独立運動を主導した幹部の恩赦とカタルーニャ語を公用語にすることなど様々な要求をつきつけています。

Q.要求は実現しそうですか?

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下院では19日からカタルーニャ語などの地域言語の使用が認められ、EUにも公用語とするよう政府が提案しましたが、問題は独立派への恩赦で、24日野党主導の大規模な反対デモが行われました。住民投票の要求が再び持ち上がる可能性もあり政権運営は容易でありません。きょうから2か月以内に首相が選出されなかった場合は来年1月に再選挙となります。スペインの政局の混乱はヨーロッパの不安定要因になりかねません。


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二村 伸  専門解説委員

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