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ウクライナ・ゼレンスキー大統領 国連総会で演説へ

安間 英夫  解説委員

ウクライナのゼレンスキー大統領が19日、ニューヨークで開かれている国連総会に出席し、演説を行います。

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Q)ゼレンスキー大統領が国連総会に対面で出席するのは、ロシアによる軍事侵攻のあと初めてとなるのですね。

A)
はい。去年はビデオ演説でしたが、ことしは現地入りします。
これを前にウクライナ大統領府のポドリャク顧問は、NHKのインタビューで、「ロシアが唯一の侵略国家で国際法を完全に無効にする国だということを明確にしなければならない」と述べ、ゼレンスキー大統領が国際秩序の維持に向けて各国に支持を訴える方針を明らかにしました。
国際会議への出席と言うと、ゼレンスキー大統領はことし5月、G7広島サミットに電撃的に出席して強い印象を残しました。
しかし国連総会は勝手が違います。
欧米や日本で作るG7はウクライナを支持するいわば仲間内ですが、国連は敵対するロシアのほか、ウクライナを全面的に支持する国ばかりではないからです。

Q)どんなことが懸念材料となるのでしょうか。

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A)
去年のビデオ演説では、出席者が立ち上がって拍手を送る反応が見られました。
ところがことしは軍事侵攻が長期化し、ウクライナを支持する国からもいわゆる“支援疲れ”が指摘されています。
またアジア・アフリカなどの新興国や途上国、グローバル・サウスと呼ばれる国々から、危機に直面しているのはウクライナだけではないとして、世界のほかの紛争や危機にも焦点をあてるべきだという姿勢が見え始めています。
ゼレンスキー大統領は、できるだけ多くの国から支持や支援を得られるよう、各国首脳に直接働きかけたい考えです。

Q)ゼレンスキー大統領にとって試練となりますね。

A)
はい。そうしたなかでウクライナの国内事情の影響が懸念されます。
ウクライナでは汚職が長年深刻な課題とされてきました。
今月も国防省での汚職疑惑の責任をとらせるかたちで、側近だったレズニコフ国防相を事実上更迭せざるを得ませんでした。
レズニコフ国防相は、欧米との窓口になって軍事支援を引き出し、軍事侵攻への対応で中心的な役割を果たしてきました。
汚職問題は、国民からの支持だけでなく、ウクライナを支援する国々の信用も損なうおそれがあり、ゼレンスキー大統領にとっては、国の内外で支持をつなぎとめられるかどうか、大きな試練です。

Q)うまく行きそうでしょうか。

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A)
なかなか難しい課題です。
ゼレンスキー大統領は、国連総会の演説のあと、20日には安全保障理事会でウクライナ情勢をめぐる首脳級会合にも出席する予定で、ロシアのラブロフ外相との間で応酬となることも予想されます。
また21日には、バイデン大統領とワシントンで首脳会談を行う見通しです。
このようにゼレンスキー大統領にとって今週は、外交の正念場となり、その動向に注目していく必要があります。


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安間 英夫  解説委員

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