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インボイス開始まで1か月 制度の内容と課題は

岸 正浩  解説委員

消費税の「インボイス制度」が10月の導入に向けていよいよ1か月となりました。

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Q)改めてどういう制度なのですか?

インボイス制度は消費税を正確に納めてもらうために設けられました。税務署に登録すると請求書などに登録番号、税率、税額を記したインボイスを発行できます。

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話を単純化して例えます。ある企業が町工場に本体価格が1万円分の製品を発注したとします。町工場がインボイスの事業者になると、来月から消費税10%、税額1000円などと記したインボイスの請求書を発行します。これがあると企業は納税する時に消費税分の1000円分を控除、つまり引いて納めることができます。

Q)この制度には小規模の事業者やフリーランスの人たちから影響を心配する声も上がっていますよね。

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そうです。というものもこうした方の中で、売り上げが1000万円以下の方は「免税事業者」と言って売り上げにかかる消費税を納める必要がありません。インボイスは義務ではないので、10月以降も免税事業者のままでインボイスを発行しないと決めた場合、企業が消費税分の控除をできなくなり、負担を被る可能性もあります。すると取引する企業が値下げを要求するといった懸念も出ています。

Q)そうなると困りますよね

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そこで公正取引委員会がそうした要求をするのは良くないとして18の事業者に注意を行うなど厳しく対処する方針を示しています。一方、国は免税事業者がインボイスの事業者になった場合に3年間、税負担を売上税額の2割に軽減するなど対策をとっています。事業者の方はまずは取引先とよく話し合ってインボイスを発行した方がいいのか、判断した方がいいです。

Q)周知は進んでいるのでしょうか?

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国も専用のコールセンターを設けるなど態勢をとっていますが、まだ十分に理解が進んでないという指摘もあります。国には引き続き周知に力を入れて欲しいと思います。


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岸 正浩  解説委員

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