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新首相でカンボジアは変わるか

藤下 超  解説委員

カンボジアで、40年近く首相を務めてきたフン・セン氏に代わって、その長男が、先週、新しい首相に就任しました。カンボジアは変わるのでしょうか。

Q)自転車に乗っているのが新しい首相ですね。

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A)カンボジア政府の運転を任されたのは、フン・マネット氏、45歳。
フン・セン氏の長男です。
先月の総選挙で当選したばかりで、政治経験はこれまでありません。
このため、父親が与党の党首として残り、息子の政権を陰で支える形です。

Q)新しい首相は、どのような人なのでしょうか。

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A) アメリカの陸軍士官学校を出て、アメリカとイギリスの大学院で学位をとったというエリートです。
その後、カンボジア軍の将校として、とんとん拍子で出世し、陸軍司令官まで務めました。
内戦中の一兵士からのし上がった父親とは対照的な経歴です。

Q)父親とは違うタイプということですが、政権運営にも変化が出て来るでしょうか。

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A)世襲では何も変わらないという批判がある一方、変化への期待も出ています。
フン・セン政権は、野党を抑圧して事実上の一党独裁体制を確立し、欧米諸国からは、非民主的だという批判を浴びる一方、中国との結びつきを強めてきました。
欧米で教育を受けたフン・マネット氏が、民主的な方向にかじを切り、欧米諸国との関係改善に乗り出すのか、注目されているんです。
日本政府も、岸田総理が、「民主的発展を後押ししていきたい」とする書簡を送りました。

Q)フン・マネット氏は、変化への期待に応えることが出来るでしょうか。

A)当面は父親の支えが必要で、これまでの路線に沿った安全運転が続きそうです。
フン・マネット氏に会った人たちに取材すると、中国との関係をどうしたらいいか、意見を聞かれたという人もいました。
新しい首相が自らの色を出せるようになるのは、慣らし運転が終わった後です。
その時、親離れできるのかどうかに、注目したいと思います。


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藤下 超  解説委員

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