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津波フラッグ 課題は

松本 浩司  解説委員

海水浴シーズンが続いていますが、津波警報などが出たとき海水浴客に避難を呼びかける「津波フラッグ」をご存じでしょうか。この旗について松本解説委員に聞きます。

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Q)この赤と白の旗が津波フラッグですね。

A)
そうです。海水浴場で津波警報などが出たらサイレンなどでも知らせますが、聴覚障害のある人や、音が届きにくい沖にいる人などに知らせるものです。
気象庁が導入して3年になりますが、まだよく知られていません。
海に行く人はぜひ覚えておいてほしいと思います。

Q)ただ、振っているライフセーバーの人が迷っているようですが?

A)
旗を振ったり掲げたりするのは海水浴場の管理者やライフセーバーなどが想定されているのですが、問題はそうした人の安全をどう確保するのかです。

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ライフセーバーの団体はガイドラインを作って
▼「監視塔や高台などで大きく振る」とし、海岸で振り続けることはしないとしています。
▼一方で「すぐフラッグで海水浴客に知らせ、率先避難者となって避難場所まで誘導する」としています。
安全の担当者は「現実的には、どのくらいフラッグで避難を呼びかけてから自ら避難するのか判断は難しい」と話しています。

Q)どうしたらよいのでしょうか。

A)
震源が近い場合、揺れの直後に津波が襲うこともあります。
東日本大震災では避難を呼びかけていた多くの消防団員が亡くなりました。

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強い揺れを感じたり、津波警報が出たりしたらライフセーバーの人たちなども直ちに避難を始める必要があります。そして可能な範囲で率先避難者として皆を誘導し、津波避難タワーや避難ビルなど安全な場所まで行って津波フラッグを振ることを確認すべきだと思います。

また自治体はビルやポールなどフラッグを掲げる場所や施設を増やし、その要員を確保する必要があります。

加えて避難路・避難場所をわかりやすく表示するなど、自治体はライフセーバーに頼りすぎに主体的に避難態勢を整える必要があります。


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松本 浩司  解説委員

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