今年2月、トルコ南部のシリア国境近くで発生し、両国で合わせて5万6000人以上が犠牲になった大地震から、6日で、ちょうど半年を迎えました。被災者支援の課題について、中東情勢担当の出川解説委員です。
Q1:
半年が経った被災地、今どんな状況ですか。
A1:
トルコ南部では、テントやコンテナ式の仮設住宅での避難生活を余儀なくされている人が、現在も60万人以上いると見られ、住居の確保が大きな課題です。失業や子どもの教育を理由に、住み慣れた土地を離れる人たちも多く、雇用の場や学校をつくる対策も急がれます。しかし、激しいインフレなど、震災前からトルコの経済が落ち込んでいるため、対策は進んでいません。
Q2:
国境を挟んでシリア側はどうですか。
A2:
状況はいっそう深刻です。シリアの内戦と主要国どうしの対立の影響で、被災地への支援物資が届かなくなっているのです。被害が集中したシリアの北西部は、反政府勢力の支配地域と重なり、アサド政権軍に包囲されているからです。
国連によりますと、400万人以上が支援を必要としています。この地域には、国連安全保障理事会の決議に基づく「人道支援ルート」が設けられ、水、食料、医薬品などがトルコとの国境の検問所を経由して、運び込まれていました。ただし、この決議は期限つきで、その都度延長する必要があります。先月10日に期限を迎えた際、アサド政権を支援するロシアが拒否権を行使したため、決議は効力を失いました。
Q3:
ロシアの拒否権が、人道支援に待ったをかけたわけですね。
A3:
はい。国連のグテーレス事務総長は、「失望した」と表明しました。
安保理で争点となったのは、決議の延長の幅です。寒さ厳しい冬を考えれば、最低でも9か月間の延長が必要だと主張する欧米各国に対し、ロシアは、反政府勢力への支援にならないようチェックするため、6か月間の延長に留めるべきだと主張しているのです。
一般市民の命を人質にとるようなロシアのやり方には憤りを覚えます。グテーレス事務総長を中心とする仲介で妥協点を見つけ、一日も早く、決議の延長を実現させる必要があると思います。
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