2021年、走行中の京王線で乗客が切りつけられ、車内が放火された事件の判決が、31日東京地方裁判所立川支部で言い渡されます。
Q:イラストは鉄道の車両が法廷になっています。映画の悪役の扮装をした人がいます。
A:この事件、京王線の車内で当時72歳の男性がナイフで刺されて大けがをしたほか、ライターのオイルで車内が放火されたなどというものです。
電車内の無差別襲撃事件は当時社会に衝撃を与えました。
Q:被告はおとなしい様子です。
A:裁判で弁護側は「ライターを投げた時点で乗客は危険な場所から逃げているか、逃げていなくても死亡する危険性はなかった」として、放火に伴う殺人未遂罪は成立しないと起訴内容の一部を争っています。これに対して、検察は懲役25年を求刑しています。
一方、殺人未遂や放火などの罪に問われている無職の服部恭太被告(26)は「申し訳ないと思っている」と話しました。被告は、仕事などがうまくいかず「死刑になりたい。そのために人を殺さないといけないと考えた」とも話しています。
精神鑑定を行った医師は法廷で「死刑を求めて犯行に至った“間接自殺”だ」と説明しています。
Q:そもそも車内に刃物を持ち込めないよう、手荷物検査はできないのでしょうか。
A:この事件の2か月前も、小田急線の車内で乗客が切りつけられる事件があったのですが、手荷物検査は、多くの人が利用する鉄道では「現実的ではない」という声が多く困難です。
国は対策として、鉄道事業者が都市部で新たな車両を導入する際には、防犯カメラの設置を今後、義務付ける方針です。
Q:ただ、防犯カメラがあっても、こういうケースの事件を防ぐことは難しいですね。
A:特に自暴自棄な犯行の場合、事件を未然に防ぐのは困難だということが裁判を通じて、むしろ浮き彫りになったと言えます。
今回の事件では車内で火が上がったにもかかわらず、ドアを開けられずに乗客が窓から避難しました。今後は、非常用のドアコックの使い方を分かりやすくすることや、警備体制の強化など、事件を未然に防ぐことが難しい時でも、被害をどう抑えるかという対策が、求められると思います。
判決は31日午後3時に、言い渡されます。
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