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朝鮮戦争休戦70年で北朝鮮の出方は

高野 洋  解説委員

1953年の朝鮮戦争の休戦から27日で70年です。
相次ぐミサイル発射で再び緊張を高めている北朝鮮は今後どう出てくるのでしょうか。

Q 朝鮮戦争の休戦から70年の節目、北朝鮮はどう位置づけていますか?。

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A 核兵器を搭載できるアメリカの戦略原子力潜水艦が42年ぶりに韓国に寄港するなど抑止力の強化を進める米韓両国をけん制するとともに、国威発揚や体制引き締めを図る上で重視しています。
1950年に北朝鮮が武力による統一を目指し韓国に侵攻して勃発した朝鮮戦争。
アメリカ軍を中心とする国連軍と韓国軍が北朝鮮軍や中国の人民義勇軍との間で戦火を交え、3年間に及んだ激戦の犠牲者は300万人以上とも言われています。
1953年の7月27日に結ばれた休戦協定によって、朝鮮半島は軍事境界線で南北に分断され、いまも国際法上、戦争は終わっていません。

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北朝鮮は7月27日を「戦勝記念日」の祝日としていて、キム・ジョンウン(金正恩)総書記は「大きな勝利と成果で輝かす」と強調しています。

Q 「大きな勝利と成果」と言いますと、何を指すのでしょう?。

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A 北朝鮮指導部は「人民生活の向上」をスローガンに掲げて経済の立て直しを目指しています。しかし、長引く経済制裁に、新型コロナ対策に伴う国境封鎖が追い打ちをかけたほか、韓国の情報機関は食料事情も悪化して餓死者まで出ていると分析しています。
そうした中、誇示できるのは軍事力しかないというのが現状です。
「反米闘争月間」と位置づけて大規模集会を開くなどアメリカへの敵意をあおる一方、
今月12日に迅速な発射が可能な固体燃料式の新型ICBM=大陸間弾道ミサイルの「火星18型」の発射実験を強行し国営メディアで大々的にアピール。その後も、短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを相次いで発射しました。
27日は、後ろ盾の中国とロシアから代表団を迎えて、今年2月以来となる軍事パレードが盛大に行われるのではないかという見方が出ています。

Q 気になるのは北朝鮮の今後の出方ですね?。

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A キム総書記は「より強力な軍事的攻勢を続けていく」と米韓両国への対決姿勢を鮮明にしています。
「国防5か年計画」の折り返しを迎えた北朝鮮は、5月末打ち上げに失敗した軍事偵察衛星の2回目の打ち上げを急ぐ方針です。加えて、完成を目指す「火星18型」の発射実験が再び行われたり、ICBM級のミサイルが太平洋に向けて発射されたりする可能性も指摘されています。また、核弾頭のいっそうの小型化・軽量化に必要な7回目の核実験も、キム総書記が決断すればいつでも実施可能な状況にあるとみられています。
9月9日に建国75年を控える北朝鮮。国連安全保障理事会の機能不全につけいる形で、8月行われる米韓合同軍事演習などを口実に今後も軍事挑発を繰り返すことが懸念され、引き続き警戒と監視が必要です。


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高野 洋  解説委員

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