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台湾・頼清徳副総統 アメリカ経由の狙いは

宮内 篤志  解説委員

台湾の頼清徳副総統が来月、外国訪問の際にアメリカを経由します。その狙いについて解説します。

Q、まず、今回の訪問はどのようなものなのでしょうか?

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A、はい。台湾が外交関係を持つ南米パラグアイで来月15日に行われる大統領就任式に出席するため、現地を訪問します。その際、経由地としてアメリカに立ち寄るということです。

Q、先日も蔡英文総統がアメリカを経由し、中国が反発しましたよね?

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A、はい。台湾の総統や副総統が外国訪問の際にアメリカを経由することは、これまでも繰り返されてきました。
それでも中国政府は、「アメリカと台湾のいかなる形の公式な往来に断固反対する」と反発しています。
背景には、頼副総統が来年1月に行われる総統選挙の与党・民進党の候補者だという事情もあるとみられ、中国側が今後、軍事演習なども含め、どう反応するかが1つの焦点です。
一方、頼氏にとっても、今回のアメリカへの立ち寄りには特別な狙いがありそうです。

Q、どのような狙いでしょうか?

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A、総統選挙の候補者として、アメリカの信頼を得たいというものです。
頼氏はかつて、みずからを「台湾独立工作者」と呼んだことがあり、本音は独立に前向きなのではないかという憶測が根強くあります。
それだけにアメリカの政府関係者なども「もし総統に就任すれば、過度に中国を刺激するのではないか」との懸念をぬぐい切れていないとの見方があるんです。
このため頼氏は懸念の払しょくに努めるとみられます。

Q、具体的にはどうするのでしょうか?

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A、日程などは明らかにされていませんが、何らかの発言の機会に、アメリカが望む蔡英文総統の現状維持路線を継承する姿勢を強調するなどして、頼氏にまとわりつく「独立色」を薄めようとする可能性があります。
総統選挙まで半年を切りましたが、世論調査では、民進党の頼氏、それに最大野党・国民党の侯友宜氏と第3党の民衆党・柯文哲氏が、三つ巴の鍔迫り合いを繰り広げています。
こうした情勢の中、頼氏が台湾防衛の後ろ盾であるアメリカとの良好な関係をアピールできるか注目されます。


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宮内 篤志  解説委員

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