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スーダン 長期化する戦闘

出川 展恒  解説委員

アフリカのスーダンでは、軍と準軍事組織の戦闘がすでに3か月続いており、終結する見通しが立っていません。
アフリカ情勢担当の出川解説委員です。

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Q1:
スーダンの軍事衝突、もう3か月も続いているのですね。

A1:
はい。この戦闘は、クーデターでスーダンの実権を握った軍とその傘下にあるRSF=即応支援部隊の権力闘争によるもので、4月15日に始まりました。
日本政府は、現地に暮らす日本人を退避させるため、自衛隊機を派遣し、国内でも大きな関心を集めました。

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戦闘は、首都ハルツームや西部のダルフール地方などで激しく続いており、国連によりますと、これまでに少なくとも1100人以上が犠牲になりました。
およそ300万人が住む家を追われ、うち70万人が近隣諸国に避難しました。
医療施設も攻撃の対象となり、食料や医薬品が不足し、深刻な人道危機が起きています。

Q2:
停戦を模索する動きもありましたね。

A2:
はい。軍とRSFは、アメリカとサウジアラビアの仲介で交渉を行い、何度か停戦で合意したものの、その都度、停戦違反が起きて、先月、交渉は決裂してしまいました。
国連のグテーレス事務総長は、「このままでは、周辺国を含む地域全体を不安定化させる、本格的な内戦に発展するおそれがある」と強く警告しています。

Q3:
事態を鎮静化させるためには、どうすれば良いでしょうか。

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A3:
国連や双方に影響力のある国の仲介が不可欠です。
先週末、スーダンの隣国で、緊密な関係にあるエジプトのシシ大統領が、スーダンと国境を接する7か国による首脳会議を開きました。
双方に即時停戦を呼びかけるとともに、人道支援のルートを確保すること、難民や避難民を保護することなどを申し合わせました。
これまで停戦が何度も破られてきたことを考えれば、停戦を監視し守らせるしくみを、どうつくるかがポイントとなります。
そのうえで、4年前、バシール元大統領の長期独裁政権が、民主化を求める市民のデモで倒された当初の目標に立ち返ること。
すなわち、軍人らによる強権的な支配を排し、民主的な国づくりに向けた政治プロセスを立て直すことが重要な課題となります。


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出川 展恒  解説委員

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