岸田総理大臣は16日から中東のサウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦、カタールの3か国を訪問し、資源外交にとどまらない幅広い協力関係を模索します。
Q1.ロシアによるウクライナ侵攻は世界のエネルギー市場にも影響を与えていますね。
ウクライナ侵攻直後には原油価格が高騰しました。またロシアからヨーロッパへのガスの安定供給が崩れ、LNG=液化天然ガスの世界的な争奪戦が進むなどエネルギー市場は安定しているとは言えず、日本にとって資源外交は重要です。
Q2.訪問先へのエネルギーの依存度が高いということですね。
原油の輸入では訪問する3つの国、サウジアラビア、UAE、カタールが全体の8割を超えています。岸田総理は首脳たちと原油市場の安定化について協議する見通しです。またLNGの輸出大国でもあるカタールとは、ウクライナ侵攻が始まる前の2021年に日本側が長期の大型契約を更新しなかった経緯があります。その後、LNGの争奪戦が進むなかで安定調達が課題となっています。
Q3.幅広い協力とはどういうことでしょうか。
訪問する国々の脱石油の取り組みと関係があります。サウジアラビアはムハンマド皇太子が「サウジ・ビジョン2030」という石油依存からの脱却や産業の多角化を目指す改革を推進し、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーや次世代のエネルギーである水素やアンモニアに強い関心を寄せています。またUAEはことし開かれる気候変動対策の国連の会議COP28の議長国を務めるほか、月探査などの宇宙開発にも熱心で日本との協力に期待しています。岸田総理は「中東での『カーボンニュートラル』の取り組みに協力する」と語っています。
Q4.協力は具体的に進むのでしょうか。
3か国の取り組みに日本の技術やシステムで協力しようと、経済界の訪問団が岸田総理に同行します。次世代エネルギー関連や環境負荷の少ない技術を持つ製造業、宇宙分野、商社など数十社が同行し協力を模索することになります。伝統的な資源外交や中東和平への貢献にとどまらず、幅広い分野で協力を進められるかが安定した関係構築の鍵を握りそうです。
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