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米フロリダ州"中国人の土地買収禁止"の波紋

髙橋 祐介  解説委員

アメリカ南部フロリダ州で今月施行された中国人の土地買収を禁じる法律の波紋について、アメリカ担当の髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1.
けさのイラストは、フロリダ州のデサンティス知事が立て札で何をストップしている?
A1.
このフロリダ州の法律は、軍の基地や空港、港、発電所などの重要インフラ施設の周辺と、農地について、7つの「懸念ある国々」を名指しして、不動産取引を制限するものです。
とりわけアメリカの市民権や永住権を持たない「中国居住者」には、土地や建物の所有を原則として禁じています、デサンティス知事は「中国共産党による影響力を排除するため」としています。違反者には最大で禁錮5年の刑事罰が科されます。

Q2.
なぜフロリダでそうした法律が出来た?
A2.
ここ数年、中国人や中国企業による土地買収が、全米各地で問題視されているからです。来年の大統領選挙に共和党から立候補したデサンティス知事は、ほかの州に先がけて規制を打ち出すことで、自らの実績をアピールするねらいもうかがえます。
これに対して、州内の中国人のグループは「特定の国籍と人種に対する差別だ」として、州を相手取って、法律の効力差し止めを求める訴えを起こしました。連邦政府の司法省も「法の下の平等を定めた憲法と、不動産取引で人種差別を禁じた連邦公正住宅法に違反する」として、原告側の申し立てを支持しています。連邦地裁で今月半ばにも審理が始まる見通しです。

Q3.
裁判はどうなりそう?
A3.
アメリカで安全保障上の理由から土地利用を規制すること自体はこれまでもありました。安全保障は連邦政府の権限が大きく、州がどこまで踏み込めるかが争点になりそうです。米中対立が深まる中、ほかの保守的な州でも、同じような規制導入を検討しています。
戦前カリフォルニア州で日系移民を標的に、外国人の土地所有を禁じた法律をきっかけに、排斥の動きが全米に広がったことがありました。今回のフロリダ州法もアジア系に対する差別や偏見を助長しかねないことが心配です。


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髙橋 祐介  解説委員

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