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イスラエル軍事作戦で緊迫するパレスチナ情勢

出川 展恒  解説委員

イスラエル軍が、今週、ヨルダン川西岸地区にあるパレスチナ難民キャンプに対する過去20年で最大規模の軍事作戦を行い、事態が緊迫しています。
中東情勢担当の出川解説委員です。

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Q1:イスラエルによる大規模な軍事作戦の目的は何ですか。

A1:イスラエル政府と軍は、ヨルダン川西岸地区の北部の町、ジェニンにあるパレスチナ難民キャンプが、ハマスやイスラム聖戦などパレスチナの武装組織の活動拠点となっているため、掃討作戦を行ったと説明しています。ヘリコプターとドローンによる空爆、および、地上部隊の侵攻で、パレスチナ人12人が死亡し、100人以上が負傷しました。国連によりますと、3人の子どもの命が失われました。

Q2:パレスチナ側や国際社会の反応はどうですか。

A2:さっそく報復のテロも起きています。4日、イスラエル最大の都市テルアビブで、パレスチナ人の男が車でバス停に突っ込み、イスラエル人7人がけがをしました。男はその場で射殺されましたが、ハマスが犯行声明を出しました。

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パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、イスラエルとの治安協力をすべて停止すると宣言し、国際社会に対し、パレスチナ人の保護とイスラエルへの制裁を呼びかけました。アラブ諸国やトルコは、イスラエルを非難する声明を出し、国連のグテーレス事務総長も、強い懸念を表明しましたが、アメリカは、イスラエルの軍事作戦を事実上容認する姿勢です。

Q3:事態は収まるでしょうか。

A3:イスラエル軍は、5日、ジェニンでの軍事作戦の終了を発表しましたが、事態が鎮静化するかどうかは、ハマスやイスラム聖戦などの武装組織の今後の行動にかかっていると思います。ガザ地区からロケット弾を使った攻撃などが続けば、衝突が一気に拡大するおそれもあります。

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一方、イスラエルでは、去年12月、極右政党が主要な閣僚ポストを握った新たなネタニヤフ連立政権が発足し、占領地での入植活動を加速するなど、パレスチナに対し、極めて強硬な姿勢を打ち出しています。今回の軍事作戦もその一環とみられ、いつでも衝突が燃え広がりかねない緊迫した状態が続きそうです。


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出川 展恒  解説委員

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